№141「帯状疱疹ヘルペス性口内炎」

本文へジャンプ 2010年1月6日 
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 №141 「帯状疱疹ヘルペス性口内炎」


上図は口蓋部の有痛性口内炎。

口内炎の痛みが続く場合、実は帯状疱疹(ヘルペス・ゾスターHerpes zoster, Zoster)が原因である場合があります。歯科の場合、三叉神経や顔面神経領域での発現が問題となり、三叉神経へ帯状疱疹が現れた場合は髄膜炎や脳炎になる場合があります。

また顔面神経に帯状疱疹ができた場合はラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt Syndrome/顔面神経麻痺)を起すこともあり、なかなかあなどれません。

動物にはなんらかのウイルスや異種生物が寄生しているのがふつうで、我々人類にも何種類かのウイルスや細菌やダニがつねに寄生しています。

例えば、毎日こまめに洗顔している人でも、新生児以外では、皮膚の汗腺には数種類のニキビダニ(Demodex folliculorum) が必ず寄生していますし、ステロイドなどの投与により、過剰増殖し皮膚炎を起すこともあります。しかし実はニキビダニは余分な上皮細胞や皮脂腺の細胞を食べてくれるために、皮膚を清潔に保つ効果を担っていると言われています。
腸内細菌が食物繊維の分解を助けたり、病原菌の侵入を邪魔したりして共生していることと同じで、ニキビダニも通常モードでは無害です。

帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルス(Variccela-zoster virus)に最初に感染したときはミズボウソウ(水痘)を起すことが多く、そのウイルスは水痘の症状が消えた後も、神経節の中に潜んでいると言われています。

帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルスと呼ばれるウイルスの中の1種類で、ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスⅠ型、単純ヘルペスウイルスⅡ型、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(日和見感染を起す)、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7、ヒトヘルペスウイルス8、EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス/伝染性単核症、バーキットリンパ腫)など8種類のウイルスに分類されています。

ふだんは何の症状も起さずに静かに潜伏(潜伏感染)している水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスですが、免疫力が低下すると急激に増殖し、特定の神経に沿って発疹と小さな水泡が連続的に発生し強い痛みを伴います。

三叉神経に帯状疱疹が表れた場合、歯槽骨の壊死や歯の自然脱落を伴うことがあります。三叉神経は咀嚼筋を動かす運動神経と顔面、上顎、下顎、舌の前方2/3の知覚を支配する感覚神経からなっていますが、
歯髄や歯槽骨、歯根膜の知覚も支配しており、この部分に帯状疱疹ウイルスが増殖し、強い痛みが表れると、交感神経の興奮と血管の収縮により、その部分の末梢循環障害が起り壊死するためと考えられます。

普通は粘膜の症状が消退すれば、自覚症状も改善しますが、高齢者などで神経の損傷が大きかった場合は長期間痛みやぴりぴりした不快感が改善しない帯状疱疹後神経痛に移行する場合があります。

初期のうちに的確な診断を受けて、バルトレックスなどの抗ウイルス剤の投与を受け、安静にして体力を回復する必要があります。

(この稿は工事中です。)