142「歯周病の分類」Classification of periodontitis

本文へジャンプ 2011年8月9日 
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 bP43 「歯周病の分類」

 日本歯周病学会による歯周病分類システム(2006)
(医歯薬出版 「歯周病の診断と治療の方針2007」P4〜5より引用。

 病態による分類  病原因子(リスクファクター)による分類
 T.歯肉病変 Gingival Lesions†


1.プラーク性歯肉炎 Plaque-induced gingivitis

⇒表2







 1)プラーク単独性歯肉炎
 Gingivitis induced by dental plaque only

2)全身因子関連歯肉炎
 Gingivitis modified by systemic conditions

3)栄養障害関連歯肉炎 
Gingivitis modified by malnutrition


 2.非プラーク性歯肉病変
 Non plaque-induced gingival lesions


⇒表3



 1)プラーク細菌以外の感染による歯肉病変 
Gingival lesion induced by other infections

2)粘膜皮膚病変 
Mucocutaneus disorders

3)アレルギー性歯肉病変
Allergic reactions

4)外傷性歯肉病変 
Traumatic lesions of gingiva
 3.歯肉増殖 
Gingival overgrowth





 1)薬物性歯肉増殖性
 Drug-induced gingival overgrowth

2)遺伝性歯肉線維腫症
 Hereditary gingival fibromatosis
 U.歯周炎
Periodontitis†

1.慢性歯周炎 Chronic periodontitis

2.侵襲性歯周炎 Aggressive periodontitis

3.遺伝疾患に伴う歯周炎 
Periodontitis associated with genetic disorders ⇒表5





⇒表4

 1)全身疾患関連歯周炎 
Periodontitis associated with systemic diseases

2)喫煙関連歯周炎
 Periodontitis associated with smoking

3)その他のリスクファクターが関連する歯周炎 Periodontitis associated with other risk factors
 V.壊死性歯周疾患 
Necrotizing periodontal diseases

1.壊死性潰瘍性歯肉炎
 Necrotizing ulcerative gingivitis

2.壊死性潰瘍性歯周炎
 Necrotizing ulcerative periodontitis

 
 W.歯周組織の膿瘍 
Abscesses of periodontium

1.歯肉膿瘍 Gingivial abscess

2.歯周膿瘍 Periodontal abscess

 
 X.歯周-歯内病変 
Combined periodontic-endodontic lesions

 ⇒表6 歯周-歯内病変の分類(Weineの分類)

 Y.歯肉退縮 
Gingival recession

 
 Z.咬合性外傷 
Occlusal trauma

1.一次性咬合性外傷
 Primary occlusal trauma

2.二次性咬合性外傷
 Secondary occlusal trauma

†は、いずれも限局型(localized)、広汎型(generalized)に分けられる。

表2 病原因子による歯肉炎の分類

 1)プラーク単独性歯肉炎
 Gingivitis induced by dental plaque only
 2)全身因子関連歯肉炎
 Gingivitis modified by systemic conditions
  @萌出期関連歯肉炎
 Puberty-associated gingivitis
  A月経周期関連歯肉炎
 Menstrual cycle-associated gingivitis
  B妊娠関連歯肉炎
 Pregnancy-associated gingivitis
  C糖尿病関連歯肉炎
 Diabetes-associated gingivitis
  D白血病関連歯肉炎
 Leukemia-associated gingivitis
  Eその他の全身状態が関連する歯肉炎
 Others
 3)栄養障害関連歯肉炎
 Gingivitis modified by malnutrition
  @アスコルビン酸欠乏性歯肉炎
 Ascorbic acid-deficiency gingivitis
  Aその他の栄養不良が関連する歯肉炎

  Others

表3 非プラーク性歯肉病変の分類

 1)プラーク細菌以外の感染による歯肉病変
 Gingival lesions induced by other infection
  @特殊な細菌感染によるもの
  Gingival lesions of specific bacterial origin
  Aウイルス感染によるもの
  Gingival lesions of viral origin
  B真菌感染によるもの
  Gingival lesions of fungal origin
 2)粘膜皮膚病変
 Mucocutaneous disorders
  @扁平苔癬
 Lichen planus
  A類天疱瘡
 Pemphigoid
  B尋常性天疱瘡
 Pemphigus vulgaris
  Cエリテマトーデス
 Lupus erythematosus
  Eその他
   Others
 3)アレルギー反応
 Allergic reactions
 4)外傷性病変
 Traumatic lesions of gingiva


表4 リスクファクターによる歯周炎の分類

 1)全身疾患関連歯周炎
 Periodontitis associated with systemic diseases
  @白血病
 Leukemia
 A糖尿病
 Diabetes
 B骨粗鬆症/骨減少症
 Osteoporosis/Osteopenia
 CAIDS
 Acquired immunodeficiency syndrome(AIDS)
 D後天性好中球減少症
 Acquired neutropenia
 Eその他
  Others
 2)喫煙関連歯周炎
 Periodontitis associated with smoking
 3)その他のリスクファクターが関連する歯周炎
  Periodontitis associated with other risk factors

表5 歯周炎を随伴する遺伝疾患

 1)家族性周期性好中球減少症
 Familial and cyclic neutropenia
3週間ごとに好中球が減少、発熱、口腔炎、皮膚化膿症を反復する。
常染色体優性遺伝。
 2)Down症候群
 Down syndrome
21番トリソミー。
95%を占めるトリソミー型においては配偶子(精子、卵)形成時の染色体不分離が原因であり、誰にでも一定の確率で起こりうる。
全体の93〜95%は21番染色体が1本過剰の21トリソミーで,親のどちらかの配偶子形成過程(減数分裂時)の染色体不分離に起因する。
全体の数%に認められる転座型21トリソミーの場合は,散発性であれば遺伝性はないが,親のどちらかが転座染色体保因者であれば遺伝性である。

知的障害、先天性心疾患、低身長、肥満、筋力の弱さ、頸椎の不安定性、眼科的問題(先天性白内障、眼振、斜視、屈折異常)、難聴、
顔の中心部があまり成長しないのに対して顔の外側は成長するため、吊り上った小さい目を特徴とする顔貌(特異的顔貌)を呈する。他には舌がやや長い、手に猿線、耳介低位、翼状頚などが発生するなど。


永久歯の萌出遅延、歯の先天的欠如、矮小歯、巨大舌、溝状舌、低う蝕性、見かけ上の反対咬合、高度の歯周疾患。
遺伝子疾患及び染色体異常の中で最も発生頻度が高い。
20 - 24歳の母親による出産ではおよそ1/1562なのに対し、35 - 39歳でおよそ1/214、45歳以上の場合はおよそ1/19。
 3)白血球接着能不全症候群
 Leukocyto adhesion deficiency syndrome
常染色体劣性遺伝

進行性の壊死性軟組織感染,歯周炎,創傷治癒不良,白血球増加,臍帯脱落遅延
 4)Papillon-Lefe'vre症候群
 Papillon-Lefe'vre syndrome 
常染色体劣性遺伝

手掌、足蹠角化症と重度歯周病による歯の脱落を主微とする疾患。
 5)Che'diak-Higashi症候群
 Che'diak-Higashi syndrome 

常染色体劣性遺伝

細胞内顆粒タンパクの輸送障害によって好中球の殺菌能が低下し、易感染性を呈する。
皮膚や呼吸器に化膿性炎症を繰り返す。
 6)組織球症候群
 Histiocytosis syndrome
常染色体劣性遺伝

組織球―単球-マクロファージ(抗原処理細胞)または樹状細胞(抗原提示細胞)―の異常な増殖に起因する,臨床的に多様な障害。
 7)小児遺伝性無顆粒球症(コストマン症候群)
 Infantile genetic agranulocytosis
常染色体劣性遺伝

@ 突然、悪寒戦慄とともに発病し、そのまま高熱が続く。
A ついで口腔および咽頭などに、特有な潰瘍あるいは壊死を生じる。潰瘍は急激に進行する傾向を示し、疼痛をうったえる。
 8)グリコーゲン代謝疾患(肝型糖原病)
 Glycogen storage disease
ほとんどが常染色体劣性遺伝

糖代謝の経路に関与する酵素の異常によって発症する疾患群。糖 をエネルギーとして蓄積するためにグリコーゲンへと変換する系、および蓄積したグリコーゲンを代謝する系に関わる酵素の先天的異常により糖代謝が障害さ れ、組織にグリコーゲンが蓄積する。グリコーゲン蓄積による臓器障害(肝障害、筋障害等)、もしくは低血糖を呈する。

低血糖・肝腫大・乳酸アシドーシス
人形様顔貌(頬に脂肪が蓄積)、成長障害、高脂血症、高尿酸血症
 9)Cohen症候群
 Cohen syndrome
常染色体劣性遺伝

肥満、知能障害、筋緊張低下、特徴的顔貌、小頭症、小顎症、高さがアーチ形天井の口蓋、めだつ切歯を呈する症候群である。
 10)Ehlers-Danlos症候群(V・[型)
 Ehlers-Danlos syndrome(TypeV and [)
大部分は常染色体優性遺伝。

皮膚の過伸展,関節の過可動性,皮膚と血管の脆弱性(血腫)を3 主徴とする遺伝性結合織疾患で,コラーゲン代謝の先天異常である。
出血しやすい(皮膚の下の青黒い出血斑や歯ぐきの出血など)。
 11)低アルカリホスファターゼ血症
 Hypophosphatasia
多くは常染色体劣性遺伝。まれに常染色体優先遺伝。

血清中のアルカリホスファターゼが欠損または減少するため,Caが広く骨内に沈着せず,骨密度の低下と高カルシウム血症を来す。嘔吐,体重増加不能,骨端の増大(くる病のものと同様)が通常みられる。乳児期を生き延びた患児は,骨変形や低身長がみられるが,精神発達は正常である。
歯、特に前歯(切歯)が早期に脱落する。セメント質形成不全。
 12)その他
  Others

表6 歯周-歯内病変の分類(Weineの分類)

 クラスT(歯内病変由来型)

エックス線所見では進行した歯周炎の骨吸収像を示すが、歯髄の炎症、壊死が原因である場合、歯髄は失活している。歯内治療を行う。
 
 クラスU(歯周病変由来型)

歯周炎による重度の骨吸収が存在し、歯周ポケットを経由して、副根管または根尖孔から歯髄が感染した場合、歯髄は生活歯の場合が多い。不可逆性の歯髄炎が疑われる場合には抜髄(根管治療)を行う。この場合、歯内療法と歯周治療の両者が必要となる。大臼歯部ではヘミセクションまたは歯根切除にて対応することも多い。
 
 クラスV(歯周-歯内病変混合型)

根尖性歯周炎による根尖周囲の骨吸収と歯周炎による骨吸収とが連絡し、合併した病変。歯髄は失活している。まず感染根管処置を行い、歯周治療との併用が必要となる。