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156「上気道抵抗症候群と睡眠時無呼吸症候群」
3~5歳にかけてアデノイド(咽頭扁桃)が過剰発育し口呼吸が続くと、その後、10歳くらいまでに自然に咽頭扁桃が収縮しても、歯列弓が狭窄し、顎が小さく、下顎が後退したアデノイド顔貌になることがあります。
舌骨が下がり舌根が気道を塞ぎやすく、口呼吸になるため、脳に供給される酸素量が減り、交感神経系が刺激される結果、熟眠が障害されます。
気がつくといつも口を開けている人は要注意。疲れがいつも抜けず、日中に耐えがたい眠気に襲われる、気分が憂鬱になりがちで、仕事や学習意欲が低下する方は、自らを責める前に睡眠中の呼吸障害があるかどうかをまず疑ったほうがいいとさえ言えます。駄目な自分はただの怠け者ではなく、睡眠障害という治療することが可能な呼吸障害の被害者であるかもしれません。
単純いびき症(primary snoring:PS)⇒上気道抵抗症候群(upper airway resistance syndrome:UARS)⇒睡眠時無呼吸症候群(SAS)と進行します。ギルミノー博士の定義によれば、一時間あたり10秒以上の無呼吸、または4%以上の血中酸素飽和度の低下を伴う換気量の減少である低呼吸が5回以上(無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上)、または7時間の睡眠中に無呼吸または低呼吸が30回以上あるとSASと判定できます。
動脈硬化の進行や日中のパフォーマンスの低下、うつ、アレルギーなど様々な不利益をもたらしますが、病識がなければ、適切な処置がなされないまま、人生のもっとも大切な期間を不顕性の障害を持ったまま過ごしてしまうことになります。
『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン2012/11/28 更新版』によれば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:obstructive sleep apnea )について、治療抵抗性高血圧の80%以上にAHI≧10のOSAがみられたとの報告があり,SASは50歳未満の高血圧患者の血圧コントロール不良の独立した規定因子となることが報告されています。その他の生活習慣病にも深い関係があり、心不全患者の11〜37%にOSAが合併し、50歳以上を対象にした平均3.4年間の観察研究によれば,AHI≧5のOSA患者群における脳卒中および死亡の リ ス ク は 対 照 群 に 比 べ 有 意 に 高 い( オ ッ ズ 比:1.97)と報告されています。また健常者と比較した場合,OSA患者における虚血性心疾患の発症リスクは1.2〜6.9倍と報告されています。心原性突然死を来たす相対危険度は2.57倍であり、5年生存率、8年生存率の明らかな低下も認められています。
側貌のレントゲン検査(セファログラム)と、就寝中の経皮的血中飽和酸素濃度(SPO2)の測定、エプワースの眠気尺度(Epworth sleepiness scale)でスクリーニングできる病気なのでご相談ください。
当院では、患者さんの希望がある場合は、セファログラムを撮影し、舌骨の位置のエリア判定でまずスクリーニングします。さらにパルスオキシメーターを貸出し、睡眠中のSPO2の測定を行います。簡単なアンケート検査を行った上で、呼吸障害を疑う方を耳鼻科へ紹介しています。その結果、マウスピース治療の有効性が予想される方にはスリープスプリントを製作し、昼間の眠気が消えるなどの治療効果をあげ患者さんから喜ばれています。
人生の三分の一を占める睡眠の質が、生活の質ばかりか生命に重大な影響を与えていることに、高度情報社会の齎すハイパーストレスに消耗し、追い詰められた挙句、睡眠時間を犠牲にしている現代人は特に注意を払う必要があります。
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