2016年9月3日修正済み
     160「生活習慣と遺伝子多型」
 
 

〇メタボリックシンドロームの診断基準

 涛熨沁塩bの蓄積 ウエスト周囲径 男≧85p 女≧90p(内臓脂肪面積 
     (男女とも≧100平方pに相当)
               +
 以下の3項目のうち、いずれか2項目以上が当てはまる場合、

 血糖値:空腹時血糖値≧110r/dl

 血圧:収縮期(最大)血圧  ≧130oHg かつ//または拡張期(最小)血圧≧85oHg

 血清脂質:高トリグリセライド血症≧150r/dl かつ//または
        低HDLコレステロール血症<40r/dl

(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005年 一部改変しています。)



 かつては「成人病Adult diseases)」と言われていた脳血管障害、悪性腫瘍、心疾患、糖尿病、痛風などの呼称を、動脈硬化、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などと一緒に「生活習慣病(lifestyle related disease)」に行政が変更したのは1997年頃のことです。


高脂血症、高血圧症、糖尿病のどれかひとつか、それ以上に罹患している日本人は人口の約半数と推定されています。名称を変更した理由は、40代〜50代から罹患しやすいこれらの病気の原因が、小児期からの生活習慣の積み重ねであり、ライフスタイルを変えることにより、病気を予防できたり、発症を抑制することが可能と考えられるためです。

 例えば、喫煙は歯周病の最大のリスクファクターですが、生活習慣病と密接な関係があり、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の合併率を上昇させ、一日に吸う本数が多いほどメタボになり、一日に20〜30本吸う人はタバコを吸わない人の約3倍メタボになりやすく、40本以上タバコを吸う人は約3.4倍メタボになりやすいという調査結果があります。

 この他に睡眠の質と時間、脂肪蓄積、食習慣、ストレス、運動習慣などの違いなどが生活習慣病の原因になります。

  したがって適切な生活習慣を守り自分の行動を自制しコントロールできる人が増えれば、「生活習慣病」は減り、医療費の逓減につながることが期待できます。

 甘い高脂肪食の摂取量が多く運動不足なカウチポテト族や、運動習慣がないヘビースモーカーや、内臓脂肪を溜めNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の状態の肥満者は、周囲から後ろ指を指され、意志が弱いために自分自身に深刻なダメージを加え続けるだけでなく、社会保障費に過度な負担を強いる無責任な類犯罪者として非難されます。

 確かに適切な運動を続け、自分を律する強い意志と正しい医学知識を持ち、食生活や摂取カロリーの自己管理ができれば「生活習慣病」は減るはずです。しかし、同じ量のカロリーを摂り、激務をこなし、ショートスリーパーのスモーカーでも、90歳以上まで深刻な病気を経験せずに済む人もいれば、同じ生活習慣でも急速に「生活習慣病」が深刻化する人がいます。

 これは主に遺伝子多形(genetic polymorphism)の違いに理由があります。ヒトゲノム計画の進展など、近年の遺伝子研究の成果により、徐々にその実態が明らかになってきました。そこから分かることは、肥満は単に意志が弱く食い意地の張った人がかかる病気ではなく、「肥満は,主に多遺伝子性の、遺伝的要因と環境の相互作用によって引き起される多因子疾患である」ということです。

1.血液型には、カール・ランドシュタイナーが1900年代に発見した赤血球の表面抗原であるABO血液型やRh因子などの他、1954年にジャン・ドセーにより発見された白血球の血液型であるHLA型(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)があり、また血小板にも1959年にファン・ローゲムらが発見した固有の血液型HPA(Human Platelet Antigenヒト血小板抗原)があります。

余談ですが、血液型は、赤血球、白血球、血小板、血漿などに数百種類の抗原があることが分かっており、一卵性双生児でないかぎり、世界中探しても、自分とまったく同じ血液型の人間は一人もいないと言われています。
臨床上、用いられるABO式血液型、Rh式血液型、HLA(ヒト白血球型抗原)、HPA式(HPA1〜HPA16),
,ダフィー(Duffy)式血液型の他、MN式、P式、Kidd式、Diego式、Kell式、Lewis式など、2016年現在、およそ300種類以上の血液型が知られ、可能な限り詳細な個人識別を必要とされる場面などで活用されているそうです。

このうちHLA抗原はクラス1とクラス2に分かれ、クラス1はA,B,Cにクラス2はD,DR,DQ,DPに大別され、それぞれタイプがあります。
若年糖尿病は日本人の場合DR4、白人の場合DR3が発症しやすいことが分かっています。

2.狩猟民族であるコーカソイドに比べ、日本人はもともとインスリンの分泌機能が貧弱なため糖尿病になりやすいと言われています。

約7万年前にヨーロッパ系と日本人の祖先につながる系統は分岐したとされています。7万年前と言えば、スマトラ島のトバ火山の破滅的な噴火により地球の気温が3〜3.5°低下したときであり、トバ・カタストロフ理論によれば、この時人類は人口1万人以下に激減し、遺伝的な多様性の多くが失われたとされています。この気温低下による全地球的な冬の時代をコーカソイドは高エネルギー食である肉食で切り抜け、日本人の祖先は遺伝的に少ないカロリー摂取で生命維持できる系統だけが生き残ったと想像されています。

日本人の先祖はおよそ6〜7万年の間、飢餓状態に置かれていた間に、倹約遺伝子(Thrifty gene)を受け継いでいる人たちだけが、少ない摂取カロリーで脂肪を蓄え飢餓を生き延びてきたと研究者は考えています。しかしこの倹約遺伝子は飽食の時代には、逆に生活習慣病を起こしやすくするリスクファクターになります。

β3アドレナリン受容体遺伝子は倹約遺伝子の代表的なものではないかとされていますが、日本人の34%は、β3アドレナリン受容体遺伝子(β3AR)を保持しており、持っていない人たちに比べ、基礎代謝量が一日200kcal低く、同じ摂取カロリーでも太りやすく腹囲が大きくなりがちで、糖尿病・高脂血症・脂肪肝になりやすいことが分かっています。

また、日本人の25%は、アンカップリングプロテイン遺伝子(UCP-1)を保持し、基礎代謝量が一日100kcal低く、下半身が太く、脂肪の代謝が悪いため痩せにくいと言われています。

逆に日本人の16%はβ2アドレナリン受容体遺伝子(β2AR)を有し、基礎代謝が一日200kcal高いのですが、筋肉がつきにくく、もし一度太ると筋肉量が少ないためやせにくいと言われています。β2AR保有者は、心臓病・うつ病・低血圧のリスクが高いと言われています。

3.日本人に多い家族性高コレステロール血症は、LDL(低比重リポ蛋白質)受容体ファミリーに先天的な異常があることにより発症します。血液中を流れる脂質はリポ蛋白に結合して運ばれ、細胞表面ではLDL受容体と結合することにより、細胞内に脂質が取り込まれます。このLDL受容体に欠陥があるため、LDLが細胞外に溢れ、蓄積することになります。

4. 脂肪細胞から視床下部の摂食中枢を抑制し、褐色脂肪細胞の代謝を亢進するレプチンが放出されます。
本来、脂肪細胞の大きな肥満者からは常に大量のレプチンが血液中に放出されるので、食欲が抑えられるはずですが、現実はそうなっていません。これはレプチンを受け取る側のレプチン受容体の遺伝子多型に原因があることが分かっています。

 40才以上の女性でLys109あるいは Gln223の遺伝子多型を持っているとBMIは26.0±3.9で、Lys109および Gln223を併せ持たない者の BMI 22.4±4.0に比べて有意に高いとされています。(出典:[レプチン受容体遺伝子多型 Lys109Arg 及び Gln223Arg と肥満の関連]名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報 第 5号 2012年近藤 志保他)

5.1996年、大阪大学医学部の松澤裕次教授により、脂肪細胞から大量に分泌されるアディポネクチンが発見されました。

アディポネクチンは、インスリンと同様に、糖の細胞内への取り込みを促進し、脂肪の燃焼を促し、血管を拡張させ、血管を修復する機能を持ち、長寿者ではこのアディポネクチンの血中濃度が高いと言われています。
アディポネクチンの分泌量は小型の脂肪細胞で多く、脂肪滴が溜まり拡張した脂肪細胞では少なくなります。体内の脂肪量が多すぎても少なすぎても、アディポネクチンの遺伝子発現は抑制されます。

アディポネクチンとその受容体にも遺伝子多型があり、G/G型はT/T型に比べてアディポネクチンの血中濃度が2/3に低下し、インスリン抵抗性と糖尿病の危険性が増します。日本人の40%はこの、G/G型を持ち、日本人の糖尿病の遺伝子素因の約15%は、このアディポネクチンの遺伝子多型によるとされています。(出典:「アディポネクチンと糖尿病・心血管病の 分子メカニズム」門脇孝他)

6.グレリン受容体遺伝子多型: 胃内分泌細胞から分泌されるグレリンという蛋白質が、脳下垂体の成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHSR:growth hormone secretagogue receptor )と結合し、GHSR分泌を促し、GHSRは成長ホルモン(GH:growth hormone)を分泌させます。

成長ホルモンは代謝を亢進させ、肝臓でのグリコーゲン分解を促進させ、血糖値を上げるホルモンですが、実は食欲増進作用も持っています。実際、海外では、牛を早く肥育させる目的で成長ホルモンを投与しています。
もう十分食べているのに、牛は食べ続け、短期間で身体が大きくなり、出荷可能になります。海外の牧場の写真でよく目にすることができる、牛の耳についているピアス状のタグが実は合成成長ホルモン(肥育ホルモン)を投与するための持続注入器なのです。

もし毎日飲む牛乳の中にこの成長ホルモンが残留していたら、太りやすくなる怖れはないでしょうか?関係団体は人体への影響はないとしていますが。

コレシストキニン(パンクレオザイミン、CCK)やレプチンが食欲を抑制するホルモンであるのに対し、グレリンは食欲を増大させます。GHSRには7種類の遺伝子多型が報告されていますが、このうち171TT⇒CC変異が過食症と密接な関係があることが報告されています。
(出典:「Association of ghrelin receptor gene polymorphism with bulimia nervosa in a Japanese population.」宮坂他 J Neural Transm (Vienna). 2006 Sep;113(9):1279-85. Epub 2005 Dec 16.)

7.MC4R遺伝子変異: MC4R(メラノコルチン4受容体)は視床下部や、海馬、視床に存在しますが、食欲を抑制する働きをしています。

「体内の脂肪細胞から血中に放出されるレプチンが血液脳関門をへて脳の視床下部にとどき,レプチン受容体を発現するPOMCニューロンを刺激,POMCニューロンはレプチンの刺激をうけてαメラノサイト刺激ホルモンを放出し,これを受け取るメラノコルチン4型受容体陽性ニューロンを刺激することが,最終的に摂食量や代謝を制御することにより体重を抑制するというレプチン-メラノコルチン経路である(出典:MRAP2の機能喪失は哺乳類の肥満と関連する 浅井 真人(米国Harvard Medical School,Boston Children’s Hospital,Department of Medicine,Division of Endocrinology)」

メラノコルチン4受容体が機能するためには、MRAP2という補助蛋白質が必要ですが、重度若年発症型肥満者からは4つのMRAP2遺伝子変異が見つかっています。正常者ではMRAP2の変異は認められていません。
つまりMRAP2遺伝子変異があると、メラノコルチン4受容体による食欲の抑制がうまくおこなわれない家族性の肥満を起こす可能性が示唆されています。

8.ニューロメジンUとニューロメジンU受容体: グレリンとは反対にニューロメジンUは摂食行動を抑制します。

ニューロメジンUは摂食行動抑制の他、エネルギー代謝機構の活性化、睡眠・覚醒調節機構の維持、ストレス応答、平滑筋収縮、血圧上昇などに重要な役割を果たしている多機能なニューロペプチドであることが判明しています。ニューロメジンUやその受容体の遺伝子変異があると、過体重や肥満が起ることが報告されています。(出典:Neuromedin U: A Multifunctional Neuropeptide withPleiotropic Roles by Vanesa ChemistrtG. Martinez and Lorraine O'Driscoll Clinical Chemistry 2015;61:471-482 )

9. 『ケネディの脂肪平衡と体重のセットポイント説』:蒲原聖可著「ダイエットを医学する」中公新書によれば、視床下部はレプチンの量により、体内の脂肪量を常に厳密にモニタリング・管理し、あらかじめ遺伝的に決められている「セットポイント」から体内の脂肪量が逸脱すると、あらゆる手段を用いて脂肪量をその個人固有のセットポイント値に戻そうとします。
 また体重のセットポイント値は、年齢とともに変化し、その変化も遺伝子により規定されているそうです。つまりヒトがダイエットでリバウンドするのは、『食事や運動により一時的にセットポイントから体重を変化させたとしても、その年齢で発現している遺伝子によって規定されていた目標の体重は変化しないために、やがて元の体重に戻る』わけです。例え一時的に体重を減らしたとしたも、自分の身体の脂肪量をレプチンをモニタリングすることにより、視床下部を中心とした中枢が感知して、基礎代謝量を減らすことにより元の体重に増やすことになります。

ダイエットを成功させるには、脳を変え、遺伝子多型により個々に規定されているセットポイント値そのものを変えなければ成功しないことになります。

10.後天的な獲得形質は後の世代に遺伝しないということは遺伝学の大原則です。しかし最近、肥満・糖尿病などでエピジェネティックス( epigenetics:後天的な遺伝子発現変化の仕組み)な遺伝子発現の変化が起きると、その後天的な獲得形質が次世代に遺伝する可能性が分かってきました。⇒RNA干渉が関係した一部の後天的形質の世代間伝搬の可能性。

11. 低体重児出産のほうが、成人になってから高血圧と耐糖能障害などメタボリックシンドロームになりやすいという研究報告があります。
  「小さく生んで大きく育てる」という考え方や、妊娠中の極端なダイエットは有害であることが分かります。低体重児は耐糖能障害を起こす確率が高くなると言う報告がされています。
  一方、高体重児出産にも問題があり、妊娠性糖尿病の母親からは巨大児がうまれやすくなり、難産になりやすいだけでなく、赤ちゃんが呼吸不全を起こしやすくなったり発育不全や心筋症を起こすことがあります。巨大児も将来、糖尿病になりやすいと言われており、小さすぎても、大きすぎても糖尿病のリスクが大きくなります。

IUGR(子宮内胎児発育遅延 Intrauterine growth restriction)があると、ホルモン分泌のフイードバック機構のプログラミングにミスが生じるためにインスリン抵抗性の発症確率が上がり、耐糖能障害や肥満、心臓病、循環器障害が起こりやすくなります。(Philips et al., 1998)

12.血糖値が下がると、ブドウ糖だけが栄養源である脳は、自分を守るために、脳以外の身体の組織のインスリン感受性を低くして、脳以外がブドウ糖をうまく取り込めないようにします。その結果、極端な糖質制限を行うとかえって糖尿病が進行しやすくなる可能性があります。

13. 腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の違いが肥満を誘導し、インスリンの需要を増大させ、糖尿病を引き起こしている可能性があります。そしてマイクロバイオームの違いは抗生物質投与や食生活などの環境要因に他に、遺伝子素因が関係しているという報告があります。マイクロバイオームの細菌構成と遺伝子多型の間に関係があり、一卵性双生児ではマイクロビオームに類似性が確認されています。

腸内や口腔内のマイクロバイオーム(microbiome:常在細菌叢)の組成は、食事や抗生物質投与などの環境因子により容易に変化します。またマイクロバイオームを構成する細菌種は一人一人異なり、宿主の遺伝子多形と相関すると言われています。

「ヒトマイクロバイオーム計画でこれまでに蓄積された菌種解析データから,大人の常在細菌叢の90%以上が4つの 門, す な わ ち フ ィ ル ミ ク テ ス(Firmicutes),バクテロイデーテス(Bacteroidetes),アクチノバクテリア(Actinobacteria),プロテオバクテリア(Proteobacteria)に属する菌種で占められ,その組成は個人間で大きな差があることが明らかになった」

「腸内細菌叢には,先に挙げた人種や食習慣に関係しないエンテロタイプがある一方で,それぞれの人種に特徴的な部分もある。
大都会のアメリカ人,ベネズエラの内陸奥地アマソナス州の原住民,アフリカ・マラウイの原住民という,人種や生活・食習慣が全く異なる500人以上の腸内細菌叢の比較が行われた。アメリカ人はタンパク質や脂質が豊富で多彩な食事をとり,ベネズエラとアフリカの原住民はトウモロコシを主食とした単調で低タンパク質の食事をとる。16S遺伝子解析による菌種解析の結果,アメリカ人はベネズエラとアフリカの原住民と,統計的に有意な差がある細菌叢を持つ一方,ベネズエラとアフリカの原住民間には有意な違いがないことがわかった。この違いは大人だけでなく乳児も含めたあらゆる年齢層で見られた。」
 マイクロバイオームは人体と共棲し、肥満やメタボリックシンドロームの発症,免疫系のT細胞の分化誘導,酢酸による腸管上皮細胞のバリア機能の増強などに重要な役割を担っています。
「肥満の人の腸内細菌叢は,健康な人の腸内細菌叢と異なっている。肥満の腸内細菌叢ではフィルミクテス門が健常者よりも多い。フィルミクテス門は,これとトレードオフの関係にあるバクテロイデーテス門に比べて糖類を代謝する遺伝子を多く持つ菌種が多い。このため,同じカロリーの食事をとってもその高い糖類代謝能によって脂肪の蓄積が増加すると説明されている。事実,低糖類の食事でダイエットに成功した人たちのフィルミクテス門は,肥満時よりも減少し(同時にバクテロイデーテス門が増え),健常者と同等の菌種組成に変化する。」
(13の出典:日経サイエンス「個人差を生むマイクロバイオーム」 服部正平東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)

14.睡眠障害と肥満の関係: 睡眠時間が短くなると、肥満につながることが良く知られています。
脂肪細胞からはレプチンが放出され、視床下部の腹内側核にある満腹中枢のレプチン受容体と結合し、摂食行動を抑制します。またレプチンと視床下部の神経ペプチドは視床下部の血糖調節機構を刺激し、骨格筋での糖代謝を促進し、エネルギー消費量を増やすことが分かっています。
睡眠時間が短いか、熟眠が障害されていると


〇それ自体が生活習慣病である肥満と脂肪過多は、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧など他の生活習慣病の原因になります。摂取カロリーより消費カロリーのほうが多ければ太らないわけで、一見単純な病因に見えるから、世間の肥満者に対する扱いは酷薄です。特に医療関係者ほど患者を厳しく評価する傾向が強いのですが、背後には生まれ持った遺伝子素因の他、孤立化やテクノストレス、少子高齢化社会の未来への不安、介護問題、経済問題などによる慢性ストレスや睡眠不足など、高度情報社会の抱える諸事情があることを忘れてはなりません。
 したがって適正な食事指導や運動指導の他に、患者さんが自らの抱えている根本的な原因を科学的・合理的に理解・把握する手助けを行い、患者さんがそれぞれ自分に合った方法でストレスコーピング(対処)できることが理想的な解決法になります。