2016年9月5日工事中
     161「うつと摂食障害(工事中)
 
 〇 非定型うつ病と摂食障害: うつ病の患者さんは睡眠障害と食欲不振を伴うことが多く、痩せているイメージが強いのですが、実際は過食も含む摂食障害を伴います。特に最近、話題になる新型うつ病(非定型うつ病、ディスチミア型うつ病)では、典型的なうつ病(メランコリー型うつ病)の症状が表れにくく、会社を休んで遊びに出かければ溌剌として元気に過ごせる場合が多いと言われ、過食傾向を持つ場合が認められます。

〇うつと摂食障害: 大脳の新皮質でストレスが認知されると、それは脳幹部の周りを取り囲む大脳辺縁系(海馬、外側中隔、扁桃体など)に伝わります。大脳辺縁系は食欲・性欲・集団欲などの本能的な欲動と関係するほか、快・不快・恐れ・怒りなどの情動を生む場であることが確認されています。

 ストレスが加わるとき、ある時は一過性の食欲低下を招き、ある時は過食を招きます。またストレスは慢性的な拒食の誘因になるときもあれば、過食の原因になることもあります。いったいその違いはどこにあるのでしょうか?ストレスの種類が違うのか?それとも遺伝的な素因の違いか?過去の記憶や体験の違い、トラウマの有無の違いにあるのか、そのメカニズムはいまだに不明です。

経験的に、近親者や恋人を急に失ったときは食欲低下か、拒食が起こることが多く、職場で生意気な後輩と激論の末にやり込められたときなどは、どちらかと言えば過食が起こるような気がします。ストレスの範疇は同じでも、それで引き起こされる情動が失望や喪失感につながるものか、怒りや憤懣につながるものかで摂食行動への影響は逆になることが多いようです。

ストレスが加わると、私たちの身体は次のような反応を起こします。

@ SAM軸またはSAM系(視床下部-交感神経-副腎髄質軸/sympathetic-adrenal-medullary axis):

 生体がストレスに曝されると、情動ストレスが交感神経系を亢進させます。視床下部室傍核 の神経分泌ニューロンからアセチルコリンが分泌され、副腎髄質と交感神経からアドレナリン,ノルアドレナリンが分泌され,攻撃または闘争・逃走反応を制御します 。

A HPA軸またはHPA系(視床下部-脳下垂体-副腎皮質軸 /hypothamic-pituitry-adrenal axis):ストレスに曝されると視床下部より副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (corticotropin-releasing hormone: CRH) を分泌する。
CRHは脳下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone: ACTH)分泌を促進し,これが副腎皮質からのグルココルチコイド分泌を促す。

B HPG軸(視床下部‐下垂体‐性腺系/hypo- thalamo-pituitary-gonadal axis;?HPG?axis ):
C 疼痛の下降性抑制系の機能を抑制させる。
D 過食や拒食など摂食行動への影響
E 負荷された刺激による知覚神経の興奮とSP(サブスタンスP)やCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などニューロペプチドの放出

 大脳辺縁系は視床下部の上位中枢であり、視床下部は怒りや恐れ、快感などの情動の中枢であるだけでなく、自律神経系、内分泌系、体温、血圧、心拍数、抗利尿ホルモン、睡眠、性行動などを調整する中枢です。ストレスが加わったとき、うつを発症するメカニズムを説明する仮説のひとつとしてHPA軸(視床下部Hypothalamus-脳下垂体Pituitary-副腎Adrenal gland)仮説があります。

過剰なストレスによりHPA軸のフィードバック機構が壊れ、副腎からコーチゾンが大量分泌することにより、海馬と扁桃体の神経細胞が萎縮・死滅すると言われています。