2018年3月5日
     166「Diagnostic terminology approved by the American Association of Endodontists and the American Board of Endodontics

     AAE(American Association of Endodonticsアメリカ歯内療法協会)とABE(American Board of Endodonticsアメリカ歯内療法会議)により承認された診断の専門用語
 
 〇Examination and Diagnostic Procedures検査と診断の手順 
歯内治療学の診断はジグソーパズルに似ている。診断はひとつの孤立した情報の断片からは行わない。臨床医は、「ありそうな」診断をするために、すべての必要な情報を体系的に集めなければならない。医学的なそして歯科的な既往歴を聴くときに、もし、特に主訴があるならば、臨床医は、「ありそうな」診断をするために、すでに予備的なそして論理的な診断を彼または彼女の心中に形成しておかなければならない。歯周組織検査、および臨床検査(歯髄および根尖周囲組織検査)の組み合わせによる臨床検査およびレントゲン写真撮影が、予備診断を確認するために用いられる。いくつかのケースでは、臨床検査とレントゲン検査が、決定的でないか、または矛盾する結果を出し、歯髄及び根尖歯周組織の診断が不可能なことがある。診断なしで治療がされるべきではないばかりか、このような状況では、患者は待つ必要があるかもしれず、後日に再評価されるか、または歯内療法専門医に紹介されるべきことを認めることが重要である。
〇歯内療法学の診断をするために必要な診査手続き
1. 医学的なあるいは歯科的な既往歴:過去の、そして直近の治療、投薬内容
2. 主訴(と副訴):期間、症状、痛みの持続時間、位置、開始、誘発刺激、症状のない期間、紹介の有無、医薬品
3. 臨床検査 @歯髄検査:冷温テスト、電気歯髄診断
       A根尖周囲検査:打診、触診、破折検査子(咬合圧)
4. レントゲン解析:New periapicals(少なくとも2つの)咬翼法、コーンビーム型CT
5. 追加検査:イルミネーター、診断のための局所麻酔、試験切削
〇歯髄の診断
1. Normal Pulp正常歯髄は歯髄になんら症状がなく、歯髄テストに対して正常に反応する場合の、臨床的な診断カテゴリーである。 歯髄は組織学的に正常ではないにも拘わらず、臨床的に正常な歯髄は、温熱テストに穏やかなまたは瞬間的な反応を示し、刺激物が取り除かれれば反応は1〜2秒以上は続かない。問題の歯の隣在歯や反対側の同名歯と比較することなしにまず確実である診断に到達することはできない。患者が正常な冷水テストへの反応に慣れるように、最初に隣在歯や反対側の同名歯の検査をすることが最善である。
2. Reversible pulpitis 可逆性歯髄炎は、病因学の正常で適切な管理からは、炎症が消退し歯髄が正常に変わるのであろう自覚的・他覚的な所見に基づいている。 不快は冷水刺激や甘味刺激のような刺激が加わったときに感じ、刺激を取り除いてから2〜3秒経つと消え去る。典型的な病因は露出象牙質(知覚過敏症)、むし歯または深い修復物である。疑いを持たれている歯の根尖部には著しいレントゲン写真の変化はなく、痛みも持続しない。病因論のメネージメント(むし歯の除去と保存修復、露出象牙質の被覆)から考えれば、その後、その歯が「可逆性歯髄炎」が正常な状態に戻るかどうか正確に決める評価をする必要がある。知覚過敏症それ自体は非炎症性の過程であるにもかかわらず、この実体の症状のすべては可逆性歯髄炎の症状に似ている。
3. Symptomatic irreversible pulpitis 症状のある非可逆性歯髄炎は治癒不可能な生活歯髄の炎症の自覚症状と他覚症状に基づいており、根管治療の適応になる。特徴は、温熱テストにおける鋭い痛み、長引く痛み(しばしば刺激物を除いた後も、30秒以上かもっと続く痛み)、自発痛(無刺激時の痛み)そして関連痛である。しばしば苦痛は、横になるとか腰を折るなどの姿勢の変化で強くなり、市販薬の痛み止めでは鎮痛出来ない。共通の病因として、深いむし歯、大きな修復物、歯冠破折による歯髄の露出などを含む。症状のある非可逆性歯髄炎は、炎症がまだ根尖歯周組織に及んでいないので、その結果、打診に不快感と痛みを感じないため診断がむつかしい。そのようなケースでは、歯科既往歴と温熱テストが歯髄の状態を判定するために最初に行う検査手段である。
4. Asymptomatic Irreversible Pulpitis 無症状の非可逆性歯髄炎は、治癒不可能な致命的な炎症の歯髄と根管治療の適応であることを示す、自覚症状・他覚症状に基づく臨床的な診断である。これらのケースは臨床の徴候を全然持っていない。そして、通常の温熱テストに正常に反応しない。たぶん外傷または深いむし歯により結果として、脱落後の歯髄露出を結果として生じたかもしれない。
5. Pulp Necrosis 歯髄壊死は、歯髄の死を指し示す診断カテゴリーであり、根管治療を必要とする。歯髄は電気歯髄診断に無反応で自覚症状もない。歯髄壊死自体は、根尖性歯周炎の原因とならない(打診反応またはレントゲン上の骨の破壊)し、髄腔は感染していない。いくつかの歯は、石灰化の進行や、最近の外傷の既往、または単に歯が無反応なために電気歯髄診断に反応しない。以前に述べられたように、これは、すべてのテストが相対的な性質をもっているにちがいない理由である(例えば、患者はすべての歯で温熱テストに反応できるわけではない)。
6. Previously Treated 既根管治療歯は、その歯がすでに根管治療を受け、根管内が根管貼薬剤は除く、色々な根管充填剤で充填されていることを示す臨床的な診断カテゴリーを意味する。歯は一般には温熱テストや電気歯髄テストには反応しない。
7. Previously Initiated Therapy すでに歯内療法が着手されている歯は、生活歯髄切断法(pulpotomy)や抜髄(pulpectomy)のような不完全な根管治療によりすでに治療着手されている歯を指し示す臨床的な診断カテゴリーである。その根管治療のレベルにより、歯髄検査方法に反応したり反応しなかったりする。
〇根尖の診断
1. Normal Apical Tissues 正常根尖歯周組織は、打診、歯髄電気診、レントゲン所見が正常である。歯根周囲のラミナ・デュラは正常で、歯根膜腔は均一である。歯髄検査では、比較のための打診・触診は常に患者の正常な歯から始めるべきである。
2. Symptomatic Apical Periodontitis 症状のある根尖性歯周炎は、通常、根尖歯周組織の炎症を意味し、それは咬合時や打診、衝撃や触診に対する疼痛反応を生ずる根尖性歯周炎である。これはレントゲン上の変化(すなわち疾病のステージにより、正常な歯周靭帯の幅を認めるかもしれないし、根尖歯周組織の透過性を示すかもしれない)を伴わないかもしれない。触診または打診、あるいはその両者において、激しい痛みがある場合は、歯髄の変性を指し示し、根管治療を必要とする。
3. Asymptomatic Apical Periodontitis 無症候性根尖歯周炎は、歯髄が原因の根尖歯周組織の炎症と破壊である。それは根尖部のX線透過像を示し、臨床的な症状(打診や触診に対する痛みなどの)がない。
4. Chronic Apical Abscess 慢性根尖膿瘍は、歯髄の感染と徐々に始まる壊死に特徴づけられる炎症反応であり、あるかなしかの不快感と間歇的な関連する空洞らの排膿を伴う。レントゲン的には、X線透過像のような典型的な骨破壊の徴候がある。排膿があるとき、排膿の原因個所を同定するには、
注意深くガッターパーチャーを小孔や開口部に膿が止まるまで差し入れてからレントゲン撮影をする。
5. Acute Apical Abscess 急性歯周膿瘍は、歯髄壊死と感染に対する炎症反応であり急速に始まる、自発痛、歯への圧力に対する極端な疼痛閾値低下、膿汁形成、関連組織の腫脹が特徴である。そこでたぶん、破壊を示すレントゲン所見はなく、患者はしばしば不快感や熱発、リンパ節腫大を経験する。
6. Condensing Osteitis 硬化性骨炎は、根尖に通常見られる低レベルの炎症性刺激に対する局所的な骨の反応を表す拡散したレントゲン上の病変である。