![]() 信州大学医学部歯科口腔外科・松本市歯科医師会共催臨床歯科医療談話会 第1回 「病診連携の中でのインプラント臨床」 事前抄録 |
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ご挨拶:「第1回 臨床歯科医療談話会」開催にあたって 信州大学医学部歯科口腔外科教室教授 倉科憲治 日頃より、松本歯科医師会の諸先生方には大変お世話になっておりこの場を借りて御礼申し上げます。 この度、当教室と松本市歯科医師会の共催という形で本研究会を行うことができるのは意義深く、大変に喜ばしいことと考えられます。研究会の提案に対しご賛同いただき、早速に対応していただきました役員の先生方、学術部の部員の先生方に改めて感謝申し上げます。日頃は患者さんを通じての交流はあるものの直接顔を合わせることが少なく、大学病院はなんとなく敷居が高いという声も聞かされます。実際には敷居などないと思っていますが、お互いに顔が見えないことや直接声を掛け合うことが少ないために、この様な感じが生じるものと考えられます。このような研究会を通じて今までと違った関係が生まれることを期待し、それにより病診連携が円滑に行えるようになればすばらしいと思います。本研究会開催の意義はまさにその点にあると考えられます。 第1回である今回は、「インプラント治療における病診連携」と副題をつけさせていただき、インプラント治療における病診連携のあり方、可能性を探ることにいたしました。インプラント治療を選んだ特別の理由はありませんが、最近一部の先生方と共同でインプラント治療の手術を行っており、具体的な事例をご紹介できると考えたに過ぎません。今後は様々なテーマを取り上げ、本研究会を続けていけたらと考えております。本研究会のような会は回を重ねることで「顔を見せ合う」という第一の目的が達成せられるものであり、継続して行っていくことが最も大切と思われます。また継続することにより新しい方向も見出せるとの期待もあります。本研究会を通じて、大学病院と「かかりつけ医」との新しい関係を築くことができ、お互いのため、患者さんのためになれば非常に喜ばしいことです。 今後の本研究会の発展と松本市歯科医師会の益々の隆盛を祈念いたしましてご挨拶とさせていただきます。 「病診連携の意義」 松本市歯科医師会会長 春日司郎 平素、信州大学医学部歯科口腔外科教室には歯科医療における高次医療機関としての役割を果たし、また、当会の事業にご理解とご協力をいただいていることをあらためて感謝申し上げます。 この度、『臨床歯科医療談話会』が共催できますことは、私共松本市歯科医師会会員にとって非常に有意義であると考えております。 少子高齢化の進行に伴い、社会保障費特に医療費の総量規制が現実化している中で、嘗てのように一人の名医が何でも診るという時代は過ぎ去り、益々高度化する医療技術に対応すべく、病診連携による専門医の診断、治療は不可欠なものになってきました。 患者さんにとって気心の知れた「かかりつけ医」が最良のコーディネーターとして、専門医と連携して患者さんの「口腔の健康」を守る意義は大きく、安心と安全と信頼を同時に手にいれることができると思います。 この臨床歯科医療談話会が、歯科医師同士がお互いに深い信頼関係を築き、顔の見える病診連携、望まれる病診連携に繋がることを確信しております。そしてこの新しい試みが継続し発展していくことと共に、信州大学医学部歯科口腔外科教室のさらなるご活躍をご祈念申し上げます。 『病診連携の中でのインプラント臨床』 座長:信州大学医学部歯科口腔外科教室教授 倉科憲治先生 【プログラム】 T.『カムログインプラントシステム』紹介 潟Aルタデント U. 挨拶 倉科憲治先生 信州大学医学部歯科口腔外科教室教授 春日司郎先生 松本市歯科医師会会長 V. 講演 1.演題:『頭頚部腫瘍症例におけるインプラントの応用』 講師:信州大学医学部歯科口腔外科教室 酒井洋徳 先生 2. 演題:『私のインプラント臨床』 講師:松本市歯科医師会 木村歯科医院 木村茂夫 先生 3. 演題:『当歯科医院におけるインプラント症例の分析』 講師:松本市歯科医師会 汲田歯科医院 汲田 剛 先生 4 演題:『インプラント治療に対する信州大学の取り組み』 講師:信州大学医学部歯科口腔外科教室助教授 栗田 浩 先生 W. 総括・質疑 p.m.9:30よりの懇親会へ出席される方はあらかじめ、学術部へお申し込みください。 演題1:『頭頚部腫瘍症例におけるインプラントの応用』 酒井(さかい)洋徳(ひろのり)先生 【略歴】 1999年 奥羽大学 歯学部卒業 信州大学医学部付属病院研修医 2002年 飯田市立病院歯科口腔外科 2003年 信州大学医学部付属病院医員 2004年 佐久市立国保浅間総合病院歯科口腔外科 2005年 信州大学医学部助手 現在に至る 【現在の研究課題】 歯牙からのDNA抽出、解析、個人識別法 顎顔面口腔所見からの個人識別 【主な論文】 歯科用金属が原因と考えられた掌蹠膿庖症の3例 信州医学雑誌 口腔上皮癌術前頚部リンパ節転移診断のための診断基準の検討 信州医学雑誌 リドカイン含有ゼリーまたはリドカイン非含有ゼリーが全静脈麻酔後の咽頭痛・嗄声に及ぼす影響 日本歯科麻酔学会雑誌 講演要旨 近年、口腔癌に対する治療成績は向上し、5年生存率は70%を越えるようになってきました。これに伴い、術後のQOLの向上が強く求められるようになってきています。手術によって生じた大きな組織欠損は、大型皮弁による再建が飛躍的に進歩を遂げたため、以前と比べ高い満足度が得られようになってきています。しかし、審美面や機能面ではまだまだ満足が得られない症例も少なくありません。 そこで今回、頭頚部悪性腫瘍術後患者に対して、信州大学医学部付属病院特殊歯科・口腔外科で行っている、歯科インプラントを用いた審美面、機能面の回復方法を紹介します。 演題2:『私のインプラント臨床』 木村(きむら)茂夫(しげお)先生 【略歴】 1974年 新潟大学歯学部卒業、 信州大学医学部歯科口腔外科を経て、 1984年 木村歯科医院開業 日本口腔インプラント学会 会員 日本インプラント臨床研究会 会員 スタディーグループ「木曜会」会員 講演要旨 私がインプラント治療を臨床に取り入れて11年が経ち現在では毎日の臨床になくてはならない治療の選択肢の一つとなっています。インプラント治療は欠損により失われた咀嚼機能、審美性の回復に大変有効な手段です。 また強固な咬合支持を得ることで確実な「力のコントロール」が可能であり「咬合崩壊の防波堤」としての役割をはたすことができます。また矯正治療の固定源としてもインプラントを利用しています。 近年インプラント治療は予知性、安全性も高まり、マスコミにも多く取り上げられ国民一般に広く知れ渡ってきました。 最近は患者さんの方から、「私にもインプラント治療ができるでしょうか?」と、尋ねられることが多くなりました。 年々その症例数も患者さんのニーズも増加しておりそれとともに適応症の拡大を迫られております。 今回私の恥ずかしい試行錯誤の11年間の症例を見ていただきながらわれわれ一般開業医ができるインプラント治療の適応症や問題点を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。 そしてもっと多くの患者さんが安全に気軽にインプラント治療の恩恵を受けられればいいなあーと願っています。 「インプラントみんなでやればこわくない!?」 演題3:『当歯科医院におけるインプラント症例の分析』 汲(くみ)田(た) 剛(つよし)先生 【略歴】 1981年 松本歯科大学卒業、同大学歯科保存学第二講座入局 1984年 汲田歯科医院開業 顎咬合学会認定医 日本歯周病学会認定「歯周病専門医」 臨床歯周病学会 会員 スタディーグループ「綾の会」会員 【主な論文】 「クエン酸による歯牙酸蝕症」 ザ・クインテッセンス2003vol 22 no.5 May 講演要旨 インプラントがもたらす臨床上の利点には、義歯には無い咬合支持の確実さと異物感が少ない事、ブリッジに対しては支台歯削合を必要としない事とその欠損部の支持力を増加できる事、自家歯牙移植に比べマニュアル化した術式と侵襲が軽度である事があげられる。 しかし、全ての症例で満足な経過を得ているわけではなく診断、手技の習熟度等により様々なトラブルが生じている。 今回、患者への治療説明の時に自医院の治療成績を提示する事が重要と考え、少ない経験年数ながら医院の成績を分析し生じた問題点について整理してみたので発表したい。 また現在、最もインプラントの必要性を感じながらその部位の解剖学的な問題により施術をはばかっていた上顎臼歯部について信州大学歯科口腔外科に上顎洞への骨増生と埋入手術を依頼し実施しているが、その依頼基準を提示いたします。 臨床歯科医療談話会の発会に当たり、この会が今後の活発な意見交換の場となるような問題提起の発表をしたいと思います。 演題4:『インプラント治療に対する信州大学の取り組み』 栗田(くりた) 浩(ひろし)先生 【略歴】 1987年 新潟大学 歯学部卒業 1995年 信州大学(医学部附属病院)助手 1996年 信州大学医学博士 1997年 信州大学(医学部附属病院)講師 2001年 信州大学(医学部)助教授 現在に至る 【現在の研究課題】 顎関節疾患、顎関節症の診断および治療法、顎口腔腫瘍、口腔異型上皮の生体染色、 有病者の歯科治療、院内感染対策、歯科インプラント、 顎口腔機能障害のインプラントを用いた機能再建 他 【最近の主な著書】 『歯科衛生士別冊 歯科衛生士のための有病者歯科医療』 クインテッセンス 他 講演要旨 近年インプラント治療も一般的となり、一般臨床の場で広く行われるようになってきました。しかし、インプラント治療を行いたくても埋入予定部位の骨量の不足等でインプラント治療を断念せざるを得なかったり、審美面や機能面で満足の行く治療が得られない症例も散見されます。これらの症例に対応すべく種々の骨増生法が試みられていますが、これらの骨増生法は設備や患者へ与える侵襲等を考えると一般歯科医院で行うには困難が多いようです。 そこで今回、信州大学医学部附属病院特殊歯科・口腔外科で行っているインプラントを目的とした種々の骨増生法を紹介するとともに、一般歯科医院と病院歯科とのインプラント治療に関する病診連携について話題提供をしたいと思います。 |
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