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コラム
menopause:更年期障害
xerostomia:口腔乾燥症
scalded mouth syndrome:口腔乾燥症
burning tongue syndrome:舌灼熱症候群
burning lips syndrome:口唇灼熱症候群
glossodynia and stomatodynia:舌痛症と口腔疼痛症
Sjogren's syndrome:シェーグレン症候群
Geographic tongue:地図状舌
gastroesophageal reflux disease:胃食道逆流症は胃内の酸性内容物が食道に 逆流し長時間にわたって食道内に停滞するために,食道粘膜に傷害が発生したり,種々の
症状が出現したりする状態を示します。
Angiotensin-converting enzyme (ACE) inhibitors:ACE阻害剤
マレイン酸エナラプリル :レニベース」
セタプリル :「セタプリル」
カプトリル :「アポプリール」「オンフルール」「カトナプロン」「カトプロン」「カプシール」「カプトーワ」「カプトリル」「カプトリル-R」「カプトルナ」「カプトロン」「カプトロン-R」「カポテック」「コーカプト」「コパプリル」「コロカルム」「ダウプリル」「メルカプリル」
塩酸イミダプリル :「タナトリル」「ノバック」
シラザプリル :「インヒベース」
塩酸デラプリル : 「アデカット」
リシノプリル :「ゼストリル」「ロンゲス」
塩酸キナプリル
(持続性ACE阻害薬) : 「コナン」
DSM‐IV‐TR :The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders「アメリカ精神医学会」で定義している精神疾患の分類と診断のマニュアルと基準Y修正版
Complete blood cell count (CBC)全血球血算。採取した血液から赤血球、白血球、 血小板の数を調べる検査。「blood
cell count(血球算定)」とも呼ばれる。
(Fasting blood sugar, FBS) :早朝空腹時血糖。ふつう90〜110mg/dl が正常です。FBS が126mg/dlを超えれば糖尿病と診断される。
Oral thrush:鵞口瘡(がこうそう)。乳幼児の口の粘膜にできるカンジダというカビの感染症 。カビの一種である、カンジタ・アルビカンス
の感染によって起こり、産道にカンジタがいて、出産時に感染したり、 不潔なほ乳ビンや母親の乳首から感染することもあります。クリームのような白い皮疹が舌やほおの内側に付着し、痛み
を伴うこともあります。
Psychiatrist:セカイアトリスト。精神科医。
内科医 physician
外科医 surgeon
小児科医 pediatrician
産科医 obstetrician
泌尿器科 urologist
婦人科医 gynecologist
耳鼻咽喉科医 otorhinolaryngologist
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Burning mouth syndrom(口腔灼熱症候群/BMS)とは?
Burning mouth syndrom(口腔灼熱症候群/BMS)とは口腔粘膜に何ら明らかな病変が認められないにもかかわらず、舌や唇や場合によっては口全体に発現する灼熱感や痛みを伴う不快な疾病状態のことをいいます。
この障害は、更年期障害、心理学的な問題、栄養不足、口腔カンジダ症、口腔乾燥症のような口腔疾患などの様々の全身状態に関連づけられてきました。最近、幾人かの研究者が神経病理学的な背景があることを示唆しています。
しかし、その患者さんの確かなBurning mouth syndromの原因を明らかすることはしばしば困難で、痛みが数ヶ月間〜数年間続くこともあります。
治療法は、例え原因が特定できたとしても、その症状や病因に相応して患者さん一人一人でまったく異なったものになります。
たいていの患者さんが、その患者さんの病態にふさわしいオーダーメイドの治療法を選択することにより、徐々にその症状が軽快していきます。
過去、Burning mouth syndromは、scalded mouth syndrome, burning tongue syndrome,
burning lips syndrome, glossodynia and stomatodyniaのような色々な名前で呼ばれてきました。
Burning mouth syndrom(口腔灼熱症候群/BMS)の症状
Burning mouth syndrom(口腔灼熱症候群/BMS)は成人(米国)の4%に認められ、女性患者数は男性の7倍に上ります。
一般には中高年に多いのですが、若年者にもよく認められます。
主要兆候は舌、口唇、歯肉、口蓋、喉の灼熱感で、患者さんはあたかも熱い飲み物を飲んで火傷したような痛みと表現するかもしれません。その他の症状としては、口腔乾燥感、口の痛み、口や舌のうずくような感覚やしびれ感、苦い味や金属味を感ずる味覚障害があります。
ある患者さんでは、目覚める時には口の痛みを感じませんが、日中次第に痛みが強くなっていきます。また別の患者さんでは起床時から一日中痛みが続いています。また別の患者さんでは痛みが強くなったり消退したりを日中繰り返します。
Burning mouth syndromの原因(Cause)
可能性のあるBurning mouth syndromの原因は複雑で多岐にわたります。以下に述べる原因のうち単独の病因でBurning mouth
syndromの症状を訴える患者さんの比率は低く、三分の一以上の患者さんが複数の原因を持っています。原因の特定は患者さんに合った治療計画を立案するために非常に重要です。
可能性のある原因:
@Dry mouth (xerostomia):三環系抗うつ薬、中枢神経系抑制剤、リチウム、降圧利尿剤などの薬物療法の影響や加齢、シェーグレン症候群、Dry
mouthやDry eyesを引き起こす自己免疫疾患に関係があります。
A口腔カンジダ症:糖尿病や義歯の使用、特定薬物の副作用による口腔カンジダ症はしばしばBurning mouth syndromの原因となります。
B地図状舌:ドライマウスや舌痛、つぎはぎ舌を呈する地図状舌もしばしば原因となります。
C心理学的な問題:情緒障害、特にうつ病に加えて癌への不安や恐怖もBurning mouth syndromの原因となるとともに、Burning
mouth syndromがまたそれらの抑鬱状態を引き起こします。
D栄養欠乏:鉄、亜鉛、葉酸(folate,folic acid.vitaminB-9)、サイアミン(vitaminB-1)、リボフラビン(vitaminB-2)、ピリドキシン(vitaminB-6)、コバラミン(vitaminB-12)のような栄養素の不足が口腔組織に影響を及ぼしBurning
mouth syndromを引き起こす可能性があります。また、これらの欠乏はビタミン欠乏性貧血に通じることがあります。
E義歯の刺激:義歯がお口の粘膜や筋肉に物理的ストレスを加えているかもしれません。義歯に用いられている材料の刺激がお口の粘膜を刺激している可能性もあります。
F神経系の障害、損傷:舌の味覚や痛覚を支配する神経(顔面神経、舌咽神経)の損傷もBurning mouth syndromの原因となります。
Gアレルギー:食物や食物に含まれる調味料、他の食品添加剤、芳香、染料または他の物質へのアレルギー反応が原因であるかもしれません。
H胃酸の逆流(gastroesophageal reflux disease):上部消化管から口腔内での胃液の逆流が起こっても、お口の粘膜に刺激感や痛みが起こります。
I薬物療法の影響:降圧剤として用いられるACE阻害剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)の副作用。
J口腔習癖:舌突出癖やブラキシズム、クレンチングなどの無意識に口腔組織を傷つける習癖。
K糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌障害:口腔組織が糖尿病に伴う高血糖の影響を受けているかもしれません。
L更年期障害のようなホルモンのアンバランス:Burning mouth syndromは閉経期の女性に最も良く認められます。ホルモンの変化が唾液成分に影響を与えているかもしれません。エストロゲン低下。プロゲステロン低下。
M過度の刺激:過度の舌ブラシの使用やマウスウォッシュの使用、酸を含む飲み物の取りすぎがお口の組織を刺激しているかもしれません。
しばしば複数の原因が存在しています。注意深い診査を行っても、Burning mouth syndromの原因が判明しない場合もあります。
一次性BMSと二次性BMS:
一次性BMS:突発性BMS。局所的、全身的な明らかな原因が見当たらない。主として心因性が原因と考えられるもの。
二次性BMS:痛みの原因が明らかなもの。心因性との合併も含まれる。
痛みのパターンと考えられる原因:
@起床時に痛みがないが、お昼前くらいから痛みを感じ始め、徐々に痛みの程度が上昇し、夕方に最も痛くなるタイプ:主として栄養欠乏症や糖尿病に認められる。
Aいったん痛みを感じるようになると一日中痛く睡眠障害をきたすタイプ:気分変調や食欲変化、睡眠障害が見られることがあり、社会生活に障害が出ることがある。抗うつ剤を処方されている患者さんが多く、その副作用として耳下腺唾液分泌低下が認められることがある。
B断続的な痛みであり、一日のいつでも痛みをまったく感じないときがあるタイプ:不安障害や食物アレルギーを持っている人が多い。
心因性BMS:
一次性BMSを訴える患者さんでは神経症的性格が多く認められ、不安、敵対心、抑鬱傾向、自意識過剰、衝動性、被暗示性などが高いとする報告があります。DSM‐Y‐TR
ではA群(妄想性、分裂病質、統合失調型)の傾向が強く、B群(反社会性、境界型、演技性、自己愛性)のものは少ないとされています。
BMSの神経病理学的変化:
最近の研究で、BMSは三叉神経末梢の微細神経線維の神経障害に起因していることが示唆されています。またBMSの患者さんでは脳内ドーパミン量の低下があることが示されています。
スクリーニングと診断:
Burning mouth syndromを疑う症状を訴える患者さんが来院したら、まず病歴を聞き、お口の検査をします。どのような自覚症状なのかその詳細を問診し、口腔習癖や日常行っている口腔清掃習慣いついても尋ねます。
関連する原因を探すために医学的な総合検査を受けるかどうかを患者さんと相談し、血液検査、アレルギー検査、口腔組織の生検等を行います。
@全血球血算:血算(CBC)により血液中の白血球の数と種類、赤血球数、血小板数、ヘモグロビンの量、ヘマトクリット値(血液中赤血球容積比率)等を測定し、感染の有無、貧血、栄養状態等身体の状態に関する様々な情報を得ることができます。
Aその他の血液検査:ビタミンやミネラルなどの微量栄養素の欠乏が原因となることがあるため、血液中の鉄、亜鉛、葉酸(folate,folic acid.vitaminB-9)、サイアミン(vitaminB-1)、リボフラビン(vitaminB-2)、ピリドキシン(vitaminB-6)、コバラミン(vitaminB-12)の量を調べます。また糖尿病も病因一つとなりうるので、早朝空腹時血糖(FBS)も調べます。
Bアレルギーの検査:特定の食物や食品添加物、義歯の素材などにアレルギーを持っていないか検査します。
C口腔組織拭き取り培養法または生検:鵞口瘡(がこうそう)が疑われるとき、口腔内組織をスワブで拭き取り培養するか、生検します。
Burning mouth syndromは他の色々な疾病に関係するので、スクリーニング、診断、治療に皮膚科医、歯科医、精神科医、心理学者、耳鼻咽喉科医、などの専門医からなるチーム医療が必要になります。
治療は?
まず自覚症状の改善を行いますが、原因により治療法は個々に異なります。
@Dry mouth (xerostomia):口腔乾燥症を引き起こすシェグレン症候群や薬物療法、その他の原因について対処します。唾液の分泌を促進する飲み物や薬物療法が効果を生むかもしれません。
A口腔カンジダ症:鵞口瘡のように口腔カンジダ症の場合には、ナイスタチン(Mycostatin)やフルコナゾール(Diflucan)のような抗真菌剤を投与します。義歯を使っている口腔カンジダ症患者さんの場合、義歯を新製する必要があるかもしれません。
B心理学的要因:不安や抑鬱のような心理学的要因が関与している場合は、三環系抗うつ剤やベンゾジアゼピン誘導体を処方するか心理療法を行うか、あるいは両者を併用します。
C微量栄養素の欠乏:ビタミンBや鉄、亜鉛などのミネラルのサプリメントを摂取することにより、栄養状態の是正を行います。
D義歯による刺激:よく義歯を調整することにより、粘膜への刺激を少なくすることがでます。もし口腔組織を刺激する成分が義歯に含まれている場合は、新しく義歯を作る必要があります。夜間、義歯を外し、適正に義歯を洗浄するなど、義歯のとり使いに注意を払うことにより、Burning
mouth syndromの症状が軽くなる場合があります。
E神経系のかく乱、損傷(ニューロパチー):神経系に作用して痛みコントロールする薬物療法を行います。、クロナゼパム(Klonopin)などのベンゾジアゼピン、アミトリプチリンかノルトリプチリン(Pamelor、Aventyl)などの三環系抗うつ薬、またはgabapentin(Neurontin)などの抗けいれん薬等が用いられます。
また、鎮痛のために、カプサイシンを含む含漱剤を用いる場合もあります。; カプサイシンはトウガラシの実の中の有効成分です。
Fアレルギー:アレルゲンを含む食べ物の摂取を制限します。
G薬物の副作用:常用薬がBurning mouth syndromの原因になっている場合は、可能ならば別の薬物に置き換えます。
H口腔習癖:マウスガードや薬物療法、筋機能療法、自律機能訓練法などにより舌前突癖やブラKシイズムなどの習癖を取り除きます。
I内分泌障害:もし口腔灼熱感が糖尿病や甲状腺機能低下症のような全身状態と関係ある場合は、これらの基礎疾患を治療することによりBMSの症状も改善します。
Burning mouth syndromの原因がわからない場合、まず口腔カンジダ症に対する薬物療法を試し、ビタミンB投与や抗うつ剤の投与を試みる場合があります。これらの薬物療法はBMSの治療に効果を挙げています。
Coping skills 症状への対応
Burning mouth syndromは苦痛でいらだたしい病気です。いい点は治療可能な病気であるということです。
治療には時間がかかるかもしれませんが、患者さんに最適の治療法を見つけるために専門家によるチーム医療を受けることにより、徐々に症状を改善することができます。
アルコール基質の含漱剤やミント、シナモン、タバコなどの刺激物質を避けることが可能なら、短期間で患者さんの症状は改善していくでしょう。
氷のかけらやシュガーレスガムを噛むことで症状が改善する場合があります。
夜間は義歯を外し、歯磨剤の替わりに重曹で歯を磨くことにより症状が軽くなる場合もあります。
担当する医師や歯科医師は適切な生活習慣における助言を与えることにより、患者さんの痛みや苦痛を和らげることができます。
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