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歯周病のリスクファクター?
遺伝形質や習癖、ホルモン、生活習慣、基礎疾患などの違いにより、通常の歯周病治療を行っても歯周病が進行しやすく、再発しやすい人がいます。
これらの歯周病の進行を促す因子をリスクファクター(risk factor )と呼び、患者さんの持つ様々のリスクファクターをいかに取り除くか、取り除けない場合は、その影響をいかに緩和するかに歯科医院と患者さんの双方で心血を注ぎます。


1.歯周病の全身的なリスクファクター 喫煙、遺伝、糖尿病、貧血、性ホルモンの不調和、腎障害、肥満、高血圧症、精神的ストレスなど
2.歯周病の局所的なリスクファクター 咬合性外傷、不適合修復物、歯列不正、悪習癖、対合歯の喪失、非生理的な顎位など

Risk factorの種類 なぜ歯周病を助長させるのか推定される理由 Evidenceの確かさ 対策
喫煙 @ニコチンの薬理作用により、末梢血管が収縮し、循環障害が起こります。その結果、歯肉の酸素分圧が低下し、栄養の補給も不十分になります。プロービングによる出血も隠されるために、気がつかない間に歯周病が進行します。
Aニコチンは好中球やリンパ球の走化性やドン職能を障害し、殺菌能を刺激します。(殺菌能とは酵素や活性酸素で細菌をやっつける能力です。殺菌能の過剰な活性は周囲の歯周組織の障害、破壊をもたらします。)結果として歯周組織の防御機構および組織再生能などが抑制されます。
B喫煙により単球(マクロファージ)はインターロイキン1や腫瘍壊死因子、プロスタグランディンE2などのサイトカインを放出し、骨増殖因子の産生を抑制する。
Cタバコの煙の口腔粘膜に及ぼす熱的損傷。
Dニコチンが歯根表面のセメント質にすぐに付着するために、治療により歯根表面を清浄にしてもすぐに歯垢や歯石がつきやすくなります。
c
F喫煙による活性酸素を除去するためにビタミンCが消費されて、歯肉にある線維芽細胞のコラーゲン合成がうまく行かなくなります。
単一の因子で明確に歯周病を進行させる疫学的証拠が各種報告されています。
喫煙者の歯肉の炎症は軽度ですが、歯周組織破壊の進行は早く、治療にも抵抗性を示します。
喫煙者が重度の歯周病になる確率は非喫煙者の3倍と言われています。
生涯に消費するタバコの量は、歯周病で失う歯槽骨の量と正比例するという報告や、歯周ポケットの深さと正比例するという報告が多数あります。
喫煙に起因する疾患の治療に直接費やされる年間医療費は、タバコ製品の総販売額の2.5倍と推定されます。
世界全体で年間400万人が喫煙により死亡していると推定されています。

タバコ産業年間経済効果 2兆8千億円
タバコによる年間社会損失 5兆6千億円

タバコに含まれる各種有害物質
@患者さん個人には、できるだけ治療早期の禁煙教育を行い、禁煙継続を助ける。
A社会的には、学童期からの徹底した科学的な禁煙教育を実施する。
B市民には、タバコから得られる税収より健康被害による社会の損失の方がはるかに大きいことを認識させる。
糖尿病 @糖尿病患者の半数で好中球機能異常がおこります。
A単球(マクロファージ)はインターロイキン1や腫瘍壊死因子、プロスタグランディンE2などのサイトカインを放出し、骨増殖因子の産生を抑制します。
B血管の基底膜が変化し、脆くなるだけでなく、物質や細胞が通過しにくくなります。
Cコラーゲン代謝が低下します。
これらは高血糖により、Advanced glycation end-productsが血管の基底膜やコラーゲンに沈着するためと考えられています。
D糖尿病患者の30%は唾液の分泌が減り、口腔乾燥症になります。唾液による自浄作用が障害され、口の中の糖分も増加するため細菌が増え易い状態が続きます。
インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)はインスリン依存型糖尿病(IDDM)に比べ、歯周組織破壊となる危険性は約3倍高いといえます。また、糖尿病の罹患期間と歯周病の重症度に関連がみられます。また、糖尿病の罹患期間と歯周病の重症度に関連がみられます。(Fumi's dental officeより引用⇒
糖尿病専門医と連携し、基礎疾患のコントロールに努めます。
プラークコントロールの徹底と歯石除去等、通法の歯周病治療を行います。
遺伝 日本人の30%が歯周病になりやすい特定遺伝子を持っており、この遺伝子を持っていない人に比べ、18倍〜19倍、歯周病にかかりやすいという報告があります。 マクロファージの反応性が高い人は歯周病の進行が早く、治りにくい。
同じ量の菌体外毒素LPSが単球を刺激しても、通常分泌される量の何倍もの量の、インターロイキン1(IL-1)や腫瘍壊死因子(TNF-α)、プロスタグランディンE2(PGE2)などのサイトカインを放出し、これらのサイトカインが破骨細胞を活性化して骨吸収が進むと考えられています。末梢血中のIL-1の過剰生産能を調べることにより、非喫煙者の場合、歯周病の罹患しやすさが分かると考えられています。
ただ歯周病の遺伝子診断自体は、まだこれからの分野ですので、日常的に利用されるには、まだ数年かかると思われます。
エビデンスの蓄積はこれからのものと考えます。
やはり直系血族が歯周病のために、40代で総義歯もしくは多数歯欠損の義歯が必要な状態になっている場合、通常の方より、かなり綿密な日常的なケアとメインテナンスを行うべきでしょう。
貧血 貧血になると、身体は低酸素状態になり、生命を維持するためにさまざまな代償反応が起こります。ものを飲み込みにくい、食欲不振、吐き気、下痢、便秘など胃腸系のトラブルも体内各所の酸素が不足するために起こります。
酸素自体は毒性の強い気体ですが、動物はミトコンドリアにおいて、ブドウ糖を酸化し、最終的に水と二酸化炭素を産生する過程で、エネルギーを獲得しています。従って貧血により、低酸素状態が続けば、細胞はエネルギーを効率的に有酸素呼吸から得ることができなくなり、細胞の生命力が衰えます。その結果、組織の抵抗力や再生力は低下し、歯槽骨の破壊、吸収が進行します。
炎症を起こしている歯ぐきは健康な歯ぐきに比べてヘモグロビン量の上昇とヘモグロビン酸素飽和度の低下が見られ、また表面温度も炎症を起こしているほうが低い、という結果が出ています。ヘモグロビンは、酸素を運搬する役目があるが、その酸素が少ない(=酸素飽和度の低下)ということは、新鮮な血液が流れていないことを示します。口腔衛生学会雑誌第50巻第1号:2000年1月発行 ほとんどは鉄欠乏性貧血。ビタミンB12の欠乏でも貧血がおきる。
低血圧 低血圧は高血圧で血管などの臓器が傷つきにくいので、長寿であると言われてきましたが、統計的には正常血圧群よりも、やや短命化傾向が認められるそうです。この原因としては、低血圧だと脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなることが考えられ、また、40歳以上の低血圧患者の場合、動脈硬化の進行が原因で、低血圧になっている例があるためと言われています。
低血圧は、本態性低血圧、起立性低血圧、症候性低血圧に分類されていますが、起立性低血圧は交感神経の失調により、血管収縮が必要に応じて充分に起こらないために成立します。糖尿病やストレスなど色々な原因で交感神経の機能低下が起きます。
症候性低血圧の場合、その原因、つまり糖尿病、人工透析、降圧剤、降うつ剤、シャイ・ドレーガー症候群やパーキンソン病などの神経疾患、がん、白血病、貧血、甲状腺機能低下症、肝硬変など自体が歯周病を引き起こしやすい状態をつくっています。
血圧が低い場合、めまいや立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、肩こり、不眠、倦怠感、疲労感、根老い木の悪さ、動悸などの症状のほかに、胃もたれや食欲不振、便秘、下痢などの消化器症状が出ますので、これが臓器の抵抗力を低下させ、炎症があまり認められなくても歯槽骨の吸収が進んでいる歯周病のタイプに結びつくことが考えられます。
大規模なコホート研究等で、明確に低血圧と歯周病の因果関係を立証した資料は2,005年の時点では発見できませんでした。(ご存知の方はお知らせください。)

ただ臨床上の実感としては、貧血タイプの歯周病の患者さんに似て、歯肉の厚みがなく、強い炎症症状が認められないにもかかわらず、歯槽骨吸収が進んでいる患者さんが多いような気がします。
今後の統計的調査が待たれるところです。
オーバーブラッシングによる歯肉退縮が起こりやすいので、適切なブラッシング圧とストロークの指導が必要です。
歯槽骨の急速な喪失が起こる患者さんでは、食事内容、睡眠の質、貧血の合併の有無、精神的ストレスの強度、歯ぎしりなど咬合性外傷の診査を行うべきです。
咬合性外傷 リラックスして咬み合わせたとき、最初にどれかの歯が触れてしまう場合、これを早期接触といいます。
歯根と歯槽骨の間に介在する歯根膜はある程度の力には耐えられますが、強い力が加わると血行が停止し、その状態が長く続けば歯根膜は変性壊死し、歯根膜に接する歯槽骨も無機成分が失われます。これは力、つまりメカノストレスにより破骨細胞が活性化する機構があるためと思われます。
このような歯根膜や歯槽骨の破壊につながる外傷的な力を与える咬み合わせを外傷性咬合と呼びます。外傷性咬合により歯槽骨や歯根膜が破壊されることを咬合性外傷と呼びますが、咬合性外傷は、早期接触の他、強い喰いしばりや歯ぎしり、孤立歯や歯列から外れた歯にに加わるゆさぶる力、入れ歯のバネのかかる力、交叉咬合など悪い歯並びの歯に加わる傾斜力などにより起こります。
咬合性外傷のみでは歯肉の炎症は起こらず、歯槽骨も無機成分だけが失われるため、咬合調整などにより外傷力が取り除かれれば有機成分が残っている部分の歯槽骨は回復します。
でも外傷により歯根膜繊維が引き伸ばされているため、歯肉溝の細菌侵入に対する防御力が低下します。咬合性外傷と歯周病が合併するとき、歯周病による骨破壊は加速されます。
咬合が歯周病の炎症を加速させるエビデンスに対する見解は明確には統一していません。

臨床的な実感としては、力のコントロールを行なわない歯周病治療は考えられませんが、力のコントロールは、緊急時を除けば、炎症のコントロールに先行するものではないと思われます。

まず確実な炎症のコントロールを行い、下顎運動を全体的な視点から評価し、将来のメンテナンスを含めた治療計画に基づき、戦略的に咬合の再構成あるいは保存を行なうべきだと考えます。
@咬み合わせの調整
A歯ぎしりに対する治療
B歯並びの矯正治療
C補綴設計の変更
D咬合支持域を増やす目的のインプラント
不適合修復物 @精度が低く、マージン(縁)に段差のある冠やインレー
A非生理的な咬み合わせの冠やインレー
B食片が詰まりやすい冠やインレー
C義歯のバネのかかる歯への過剰な負担
D適切な沈下防止対策のない義歯
冠やインレーと歯の境界に段差がある場合、そこに食物残渣や歯垢が溜まり、不潔になります。
不潔域が形成されると周囲の歯肉や歯槽骨に炎症が起こりやすくなり、歯周病が進みやすくなります。
また歯の耐えられる生理的な限界を超えた力が繰り返し加われば、周囲歯槽骨は吸収し、沈下する義歯は隣り合った天然歯周囲の歯槽骨を吸収させます。
精度の高い生体に調和した冠やインレーに交換します。
ホルモンの不調和 @思春期

ホルモンのバランスに変化が現われ、歯肉炎に
かかりやすくなります。
口臭も現われやすくなります。
規則正しい食生活を
続け、プラークコントロールを精密に行なうことにより、炎症を抑えることができます。
A月経時、妊娠中 女性ホルモンが増加するため歯周病にかかりやすくなります。以前歯周病にかかった人は再発しやすくなります。歯肉の炎症が起きやすくなります。
お口の中のPHが酸性に傾き、むし歯にもかかりやすくなります。
つわりのために、充分な歯磨きができない場合、歯科医院で専門的清掃を受けます。母親のお口の中を清潔に保ち、むし歯菌の母子感染を防ぐ注意が必要です。
B更年期 女性ホルモンが減少し、唾液の分泌量が少なくなり、その質も低下します。口の中が乾き、お口の中が不潔になりやすくなります。
骨粗鬆症になりやすく、歯根が露出するために、歯根面むし歯にかかりやすくなります。
加齢によるお口の変化を知り、歯科医院での定期的なケアと口腔清掃、アンチエイジング対策を行ないます。
避妊薬を常用している人は、歯垢が付着していると歯槽骨吸収が進みやすい。 避妊薬の主要成分は、エストロゲンとプロゲステロン。脳に現在妊娠中であると錯覚を起こさせ、そして卵胞の成熟を刺激しないことで、卵巣に成熟した卵子を作らせないようにすることによって、排卵作用を抑制させています。ピル服用により、間脳・下垂体へのフィードバック機構が働き、ホルモン分泌が十分であると判断され、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gn-RH)の分泌を抑制するため、性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモンFSH、黄体形成ホルモンLH)分泌が低下し、その結果卵胞発育は抑制され、排卵も、卵巣からのホルモン分泌も抑制されます。
 この他、周期初期からのプロゲステロンの影響で子宮内膜像が着床しにくい状態となること、頸管粘液の状態が変化し精子の進入を困難にすること、卵管分泌液や運動の低下などがあげられます。
従って副作用では、卵胞ホルモン(エストロゲン)作用としては、頻度の高いものでは、悪心、嘔吐、頭痛や偏頭痛、頻度の低いものでは下腹痛、下痢、肝機能異常、血栓性静脈炎や高血圧などがあります。また、黄体ホルモン(プロゲステロン)作用によるものでは、倦怠感、乳房痛や乳房緊満は比較的頻度が高く、倦怠感、性欲低下、抑鬱や体液貯留は多少あります。女性ホルモンが増えることにより増加するタイプの歯周病菌にも感染しやすくなります。
プラークコントロール
腎障害 高リン血症と低カルシウム血症
透析患者さんでカルシウム、リンの異常が生じる理由
  ■腎臓がカルシウム、リンを調節している
  1)ビタミンD(活性型)は腎臓で作られる
     ⇒活性型ビタミンD欠乏⇒腸管カルシウム吸収低下
     ⇒血中Ca濃度の低下
  2)リンは尿中への排泄で調節⇒排泄経路なし
     ⇒透析による排泄のみ
     ⇒血中P濃度の増加
1.人工透析患者の歯周病罹患度に関する疫学的研究  

2.長期血液透析治療における重大な遅発生症状の一つとして、血液透析によって引き起こされる骨異常(osteopenia)があげられる。我々が治療にあたっている血液透析患者におけるOsteopeniaの発生率は5〜10%である。

3.透析による体内フッ素除去 「フッ素中毒症の一患者例では、重度の低カルシウム症、心臓不整脈および呼吸器疾患などの症状が報告され、腹膜透析なども含めた治療法が検討された。
・骨、関節の合併症は予防が重要
  ・カルシウムとリンの調節が中心
  ・特にリンは重要⇒患者自身も参加して
  ・副甲状腺対策(内科、外科)は進歩
  ・アミロイド症への対策はまだ不十分
  ・高機能膜+透析液の浄化が望ましい

食事の習慣 歯周病の進みやすい食習慣
@寝酒や継続的な晩酌習慣
A多すぎる間食回数
B不規則な食生活(外食中心、朝食を抜かす、偏食)
C砂糖や脂肪の過剰摂取
D必須ビタミンとミネラル、食物繊維の不足
E精製品や加工食品、インスタント食品の過剰摂取
E不適切なサプリメントの摂取
臨床的には食生活と歯周病とは明らかな関係があります。
ただし個別の食習慣と歯周病の重篤さの明確な関連を統計学的に実証した研究資料の蓄積は、まだ不十分なものと言えるでしょう。
歯周病以外の生活習慣病の予防を含めて、歯周病治療における患者さんの食生活実態調査とその改善は必ず行なわなければなりません。
肥満 肥満者の半数が糖尿病、高脂血症、高血圧症などの生活習慣病を合併しています。
肥満と糖尿病の関係は以前から知られていますが、近年、肥満と歯周病との関連性が示唆されるようになってきました。
脂肪細胞が大きくなることにより肥満するわけですが、脂肪細胞はサイトカイン(TNF−α)などの歯を支えている骨を溶かす物質を出す ため、脂肪細胞の数が増えるか、大きさが増大すれば、サイトカイン量も増え、歯槽骨が吸収されやすくなります。
肥満者は、歯周病に約1.5倍かかりやすいという報告を、大阪府立看護大の吉田幸恵教授や今木雅英教授らの研究グループがまとめています。
研究グループは、大阪府内の事業所に勤める「糖尿病ではない」20〜59歳の男性1470人について調べ、体重(キロ)を身長(メートル)で2回割ったBMI(体格指標)が18.5未満の人を低体重者、25以上を肥満者、その間を普通体重者とし、唾液(だえき)中の血液濃度で歯周病を判定しました。

その結果、肥満者(388人)で16.75%、普通体重者(1033人)で11.52%が歯周病にかかっていました。年齢や喫煙習慣を考慮すると、肥満者は歯周病に普通体重者より1.49倍かかりやすくなり、統計的に明確な差があります。年代ごとにみても、肥満者の罹患(りかん)率が上昇しています。

脂肪から分泌する物質が骨を壊すなどして歯周病につながる、と考えられ、吉田さんは「肥満が歯周病の危険因子の一つである可能性が見いだされた」といっています。

また空気中の酸素は比較的安定していますが、呼吸によって体内に取り入れられた酸素は、エネルギーを作り出す代謝の過程で極めて不安定な状態になり、酸化力の強い活性酸素となって、細胞膜を形成する脂質と結合し、細胞膜を破壊します。
肥満者では、代謝エネルギーを多く使いますので、活性酸素を多く発生させ、細胞やDNAなどが破壊されやすく、組織の老化が進行するために歯周病も進行しやすくなります。

ダイエット。
スカベンジャー(抗酸化物質)の摂取。

スカベンジャーは、活性酸素の攻撃をブロックする性質を持つ物質。
体内で作り出される抗酸化酵素(SOD、カタラーゼなど)、外部から取り入れるもの(ビタミンC、E、B群、カロチノイド、ポリフェノールなど)の2種類がある。また大豆に含まれるポリフェノールの一種イソフラボンも抗酸化能力が高い。
高血圧症 経験的に高血圧の人には歯周病の進行した人が多く認められます。
動脈硬化が進行していること、肥満や糖尿病などを合併している例が多いこと、歯肉増殖を起こし安いカルシウム拮抗剤の服用などが原因と考えられます。
歯周病に罹患すると、炎症の程度を示す血中の『C反応性タンパク質(CRP)』が増加します。
CRPは、炎症によって活性化された単球、T細胞でつくられるIL―1(インターキロン1)やIL―6(イ
ンターロイキン6)、腫瘍壊死因子(TNF)などの刺激によって肝臓でつくられ、CRPは白血球の細菌貧食能を促進したり、生体防御反応、組織修復作用の役目を果たします。
潰瘍性大腸炎や慢性関節リウマチ、急性心筋梗塞、膠原病、がん、敗血症などで、CRP値は上昇しますが、CRP値が上昇すると心臓発作を起こしやすくなるため、心疾患の予防の観点からも体内の炎症である歯周病を治療する意義があります。
血管中にできたプラークという動脈硬化巣が、破綻することによって内容物の脂肪塊が飛び出て血小板などが固まり血管を完全にふさいでしまうということがわかってきました。血中タンパクの「高感度CRP」を測定することによって血管の軽微な炎症をとらえることが可能ですが、高感度CRPが高い人は、肥満がなく、コレステロールが正常値でも血管の梗塞を起こすと言われています。
高血圧だから動脈硬化が進み、末梢の血管の循環障害が進み歯周病が悪化するのか、歯周病に罹患したから、動脈硬化が進み、血圧も高くなるのか、表裏一体の関係と言えなくもありません。
基礎疾患のコントロールと定期的専門的清掃、検診を受ける。
骨粗鬆症 骨粗鬆症は加齢や閉経、カルシウムの体内への取り込み不足などが原因で、骨内のカルシウム量が減って骨がスポンジ状になる病気であるのに対し、歯周病は周囲組織が歯周病菌により破壊され、歯を失う病気です。したがって歯周病の予防はプラークコントロール、つまり細菌を寄せ付けないことが第一となります。ただし、歯を支えている歯槽骨と歯は、例えば歯ぎしりなどの場合、体重と同じくらいの力を支えなければなりません。
骨粗鬆症になると、歯槽骨が歯を支えきれず、傾斜移動してしまいます。その結果、歯並びが乱れる他、噛み合せにまつわる様々な症状が現われます。骨粗鬆症で歯周病を併発すると歯周病は急速に進行します。
最近、骨粗鬆症と歯周病の関連性を取り扱うレポートが増えてきました。 基礎疾患の進行を遅らせる治療
甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症では代謝回転が上り、骨吸収とともに骨形成も亢進するが、吸収の方が優位となるため長期間のうちに骨粗鬆症が生じる。甲状腺機能低下症の治療に甲状腺ホルモン補充療法を行う場合も、骨粗鬆症の発症を招かないように定期的な骨量測定を行うなどして、十分に注意を払うことが大切である。
重度の骨粗鬆症患者では歯が脱落していることが多い。歯の脱落は歯槽骨が弱くなることからも生じるため、歯周病のほかに骨粗鬆症も増悪因子と考えることができる。
基礎疾患の治療
肝疾患 肝機能障害が進むと、タンパク質やコレステロールの原料になる脂質合成が低下するため、細胞や組織、血液の合成に支障が現れ、全身的な機能低下が起こります。当然、歯周組織の修復能力も低下します。 基礎疾患の治療
睡眠障害 睡眠障害は不眠症、過眠症、概日リズム睡眠障害(時差ぼけ)、睡眠時無呼吸症候群に大別されます。
このうち歯ぎしりと睡眠時無呼吸症候群との関連が深いと言われて、歯ぎしりによる咬合性外傷から歯周病の進行が起こることが予想されます。
また睡眠時無呼吸症候群では長時間開口状態が続くため、お口の中が乾き、唾液の持つ抗菌、自浄作用が働きにくくなります。このため、お口の中の細菌数が増加し、歯周病が増悪すると考えられます。
不眠症は、眠りが浅い、寝付けないことを特徴としますが、加齢、うつ病、自律神経失調、生体リズムの失調、ストレス、不安、カフェイン、薬物、アルコール、環境等で起こり、不眠症が続けば脳や身体の回復を図り、全身状態のバランスや生体リズムの調整がうまくできなくなりると考えられます。しかし睡眠-覚醒調節の詳細な脳内機構については不明な点が多く、睡眠の意義や重要性についてもいまだ科学的に十分に解明されたとは言えません。 ただ睡眠障害は身体の免疫力を低下させ、睡眠によって調整される種々のホルモン分泌が障害され、自律神経を含めた脳・神経機能のバランスが失われると考えられます。歯周病菌に対する免疫力も低下すると考えられます。
不眠症と歯周病との関係については、リサーチ自体がありません。 睡眠障害の治療。
適切な休息、食事、運動により免疫力を高める。
早寝、早起きなど生活のリズムをつくる。
ストレス 過剰なストレスが加わると、人間は歯を強く噛んだり、歯ぎしりをしたりします。
長時間、歯を噛み合わせていたり、急激に強く噛んだりすると、歯のまわりの歯肉や骨に大きな負担がかかり、歯周病が進行しやすくなります。
エビデンス不明 スプリント療法、自律機能訓練法、カウンセリング、咬合調整、矯正治療
悪習癖 口呼吸、歯ぎしり、弄舌癖 マイオ・ファンクショナルセラピー
歯列不正 叢生、開咬、歯根近接、列外歯 抜歯、矯正治療
食片圧入 歯並びや不良修復物が原因で、食べ物が詰まりやすくなると、細菌感染が起こりやすくなり、また詰まった食片が上皮付着を物理的に破壊するために、歯槽骨の垂直的な吸収が起きやすくなります。 ビーグル犬の実験で証明されています。 補綴的介入、形態修正、歯列矯正、フロスや歯間ブラシでこまめに清掃する。
対合歯の喪失 咬み合う相手の歯が失われた歯は挺出し、抜けてきます。 歯列、咬合、骨格のタイプにより挺出しやすい人としにくい人がいます。 インプラント、補綴、矯正
慢性消化器疾患 歯周病のために歯を失えば、消化器に負担がかかるのは理解できますが、消化器疾患があるために、歯周病が進行する根拠はあるのでしょうか? 「命を狙う口の中のバイキン―健やかな生活のために 」奥田克爾著 一世出版 では、胃潰瘍と歯周病の関係について記述しています。

また、歯周病が進行すると、胃潰瘍の原因ではないかといわれているピロリ菌の親戚のばい菌(キャンピロバクター)が増えて、その結果、アレルギー反応の一種が起き胃潰瘍と歯周病の両方が悪化するという説があります。
基礎疾患の治療
自律神経の失調 毛細血管の循環動態が悪化するため、歯周病が進行します。 不明 専門医との連携
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誤った口腔清掃習慣
歯周病菌は歯周病の直接的な原因なので、不良なプラークコントロールはリスクファクターではなく、原因そのものなわけですが、ここでは誤った歯磨き習慣により、かえって歯周病が進行する場合がありますので、取り上げてみました。

問題となる歯みがき習慣ですが、

@磨いているのに磨けていない。
正確に歯と歯肉の間に毛先が当たっていない。
A歯磨剤のつけすぎにより、歯垢がとれているか確認できないままに、歯みがきが終わっている。
B乱暴な歯みがきにより歯肉が傷つき、感染を助けている。
C不潔な歯ブラシや毛先の磨耗した歯ブラシの使用
D強すぎる歯磨きによる歯肉の後退や損傷
E歯間ブラシやデンタルフロスの使用法が誤っている場合
F電動歯ブラシへの過信
ソニケアやドルツなどの超音波歯ブラシで歯肉炎が治癒した患者さんは多く経験しています。でも音波歯ブラシを含めて、その他の電動歯ブラシを使われている患者さんでは、多くの場合、歯周炎や歯周病の充分な改善効果が認められません。(当院では)
G歯肉の炎症レベルにふさわしくない歯ブラシの使用や磨き方 
健康な歯肉のみがき方と炎症が強い時のみがき方、手術後のふさわしいみがき方はすべて異なります。
病気の状態や患者さんの癖、身体条件に適合した正しく安全なプラークコントロール習慣を指導し、習慣化していただく。
薬の長期服用
歯周病の進行に影響を与える薬はいくつか知られています。
○歯肉増殖を引き起こす薬としては以下のものが挙げられます。プラークコントロールが不十分であったり、他のリスクファクターと組み合わさる場合に、歯肉増殖が起きやすくなります。
1.抗てんかん薬 フェニトイン
2.降圧剤 ニフェジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸ベラパミル
3.免疫抑制剤 シクロスポリンA

○唾液分泌障害を引き起こすため、自浄作用を低下させる薬としては、以下の薬群が挙げられています。
1.降圧剤 α1遮断薬(プラゾシン)、Ca拮抗薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ジルチアゼム、ベラパミル)
2.副交感神経遮断薬
(抗不安薬、向精神薬、パーキンソン病治療薬 塩酸トリヘキシフェニジルなど)
3.抗ヒスタミン薬 プロメタジン
4.副腎皮質ホルモン薬 酢酸ヒドロコルチゾン、

5.抗がん剤 シスプラチン
6.X線造影剤 イオトロラン

抗精神病薬のクロルプルマジン、フルフェナジン、三環系抗うつ薬のデシプラミン、抗躁薬の炭酸リチウム、鎮痙薬のスコポラミン、眼科用薬(散瞳薬、コリン作動性効果遮断薬)のアトロピン、
たくさんの種類の薬を飲む場合に口腔乾燥の症状は現れやすくなります。

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