第1回市民公開講座 「現代の歯科医療が目指すもの 治療から予防へ」 2Dental Compression Syndrome 噛みしめ圧迫症候群 (DCS) 窪田歯科医院 窪田裕一 |
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噛みしめ圧迫症候群 Dental Compression Syndrome (DCS) あなたも私もブラキサー 上下の歯が咬み合う歯並びがある場合、ほぼ100%の人は就寝中に必要以上に強く噛みしめる習慣を持っています。 特に精神的な強いストレスに晒されている人ほど強く噛みしめると言われていますが、まれに強いストレスに晒されているはずなのに睡眠中にまったく噛みしめない方もいらっしゃることは事実です。ただし大概の人は自覚している、していないにかかわらず睡眠中に歯ぎしりをしているか噛みしめているものと推定されています。 噛みしめる習癖をクレンチングといい、クレンチングをする人をクレンチャーと呼びます。一方、歯ぎしりのことはブラキシズムといい、強い病的な歯ぎしりをする人をブラキサーと呼んでいます。クレンチングとブラキシズム、それにカチカチとまるで貧乏ゆすりのように噛む癖であるタッピングを総称してパラファンクションと通称しています。クレンチングやブラキシズムは睡眠時無呼吸症候群など睡眠中の上気道の抵抗増大とも深い関連があると言われています。 DCS(噛みしめ圧迫症候群)の症状: DCS(噛みしめ圧迫症候群)は歯牙の破折・磨り減りや知覚過敏、歯頚部くさび状欠損、咬合面のエネメル質にできるディンプル(小さな穴)、充填物の脱落、義歯の破損、歯を支える歯槽骨の垂直的な破壊、歯肉退縮、病的な歯の傾斜移動や挺出、歯並びの変形、下顎隆起・口蓋隆起など後天的な骨の隆起、咀嚼筋の疲労蓄積、咬筋肥大、顎関節への障害、筋緊張性頭痛や肩こり、顔面痛、めまい、治りにくい耳鳴りなど様々の破壊的な悪影響を患者さんに及ぼします。 DCS(噛みしめ圧迫症候群)の頻度: DCS(噛みしめ圧迫症候群)概念の提唱者であるGene McCoy博士によれば、人口の約90%がDCSの症状を持っているにもかかわらず、実際にその有病性を自覚している人は一般成人では5〜10%にすぎないとしています。。 別の調査によっても、DCS患者さんの30%はこの潜在的な習慣の有害性に気づいていませんし、自分が強い歯ぎしりや噛みしめを行なっている自覚を持っていません。歯冠がほとんどなくなるまで磨り減っている患者さんでも、「歯ぎしりをしていませんか」と聞かれて「私は絶対にしていません」とむっとする例はめずらしくありません。音の出る歯ぎしりは歯ぎしりのうち5〜15%であり、後はほとんど音がしない歯ぎしりであるというリサーチもあります。 DCS(噛みしめ圧迫症候群)の治療: 先にお話しましたように、歯ぎしりや噛みしめは昼間脳に溜まったストレスが汎適応症候群→心身の疲弊をもたらすのを防ぐため、視床下部の神経の興奮を抑える目的で行なわれる生理的なストレス回避経路としての必要性を持っています。したがって歯ぎしりや噛みしめそれ自体を敵視することはありません。ただ過剰なパラファンクションにより身体が破壊されたり損耗したりすることを防ぐ考え方で対処していきます。その対応は大きく分類して以下のようになります。 @ スプリント療法:歯列にプラスティックのカバーを被せることにより、下顎が自由に動けるようにし、また特定の歯の磨り減りを防止します。咀嚼筋に対する負担を減らすことができ、顎関節症の治療や歯ぎしり防止装置として使います。 様々なタイプがあり、取り除きたい症状や治療の目的により使い分けます。 A ストレス免疫訓練:ストレスは脳で感じるものですから、認知方法を変えることによりコントロールしやすくなります。代表的なストレス免疫療法としては以下のものがあります。詳細については成書を参照するか専門家によるトレーニングを受けてください。
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まだ一般的な治療機関にDCSの症状と噛みしめの関係の理解が充分に浸透していない可能性がありますが、もちろん松本市歯科医師会では会員に対する充分な卒後研修の機会を設け、常に最新の歯科医療の知識をもって松本市民の歯科医療に臨むように努力していますので市民の皆さんは安心して受診してください。 |
脳と咬み合せ
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