高カリウム血症と心停止 工事中 hyperkalemia( with a serum potassium)&cardiac arrest 抜歯後の血液を飲んではいけない理由
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体内のカリウムイオンの98%は細胞内に、2%は細胞外液にあることで電解質平衡が保たれています。抜歯後、患者さんに血液を飲まないように注意する理由のひとつは、破壊された赤血球中に含まれているカリウムイオンを吸収することにより、細胞外液中のカリウムイオン濃度が急激に上昇し、微妙に保たれているこの電解質平衡が崩れることを避けるためです。赤血球には血清に比べ、高濃度のカリウムが蓄積しています。そのため溶血量が少なくても血清カリウム値は大きく上昇します。 特に腎不全や副腎の病気の患者さんでは、アルドステロンの分泌が低下し、尿へのカリウム排出が減少します。血液が酸性傾向になると、細胞組織のカリウムが血中に流入しやすくなるため、もともと高カリウム血症になりやすく、血液の嚥下や組織の破壊により体内に取り込まれるK+の量が少量であっても重大な影響が現れる可能性があります。腎機能が低下すると、カリウムやナトリウム,プロトンなどの電解質バランスが損なわれます。カリウム排泄が損なわれると,高カリウム血症により心筋の興奮性は抑制され、心筋が刺激に反応しない不応性期間が延長し、心室細動(Vf)などの致死的不整脈が起こりやすくなります。 細胞外液のカリウム濃度が上昇すると、細胞内外のカリウム濃度の差が小さくなる、つまりK+の濃度勾配が小さくなるとk+の細胞外への拡散は起こりにくくなります。高カリウム血症(hyperkalemia)→脱分極(つまり電位差が小さくなる)→ 電位依存性Na+イオンチャネルが作動しにくくなる→Naイオンの細胞内への拡散が起こりにくくなり、Na電流が減少→活動電位の伝導が遅くなる→心筋興奮電流の再進入reentryによる不整脈(arrhythmia)の原因⇒洞房結節のペースメーキングに変調が生じ、徐脈や、心室細動、心停止が起こりやすくなります。 以下は、札幌厚生病院循環器科 神田孝一先生のご教示による解説です。 質問:血清カリウム値が上昇したとき、なぜ洞房結節のペースメーキングが変調をきたすのでしょうか? <答え:心筋細胞の発火・興奮に重要な役割を果たすイオンの一つにナトリウムイオンがあります。 このナトリウムイオンが急速に細胞内に流入(脱分極)することで心筋細胞の発火すなわち興奮が開始されます。 細胞外のカリウムイオン濃度が極端に高くなると (細胞の静止膜電位が浅くなり) このナトリウムイオンの細胞内への流入がストップ(電位依存性のナトリウムチャンネルが不活性化)してしまいますのでペースメーカー細胞を含む心筋細胞も発火すなわち興奮 できなくなり洞房結節停止、更には心停止に至ります。>
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・ | 心室性不整脈の発生機序 @興奮の再進入reentry 正常な刺激伝導路以外に、房室結節内に異常な刺激伝導路が存在したり、房室結節以外に心房と心室間の電気的つながりが存在し、正常な刺激から発生した電気信号がこれらの異常な伝導路を経由して再び戻ってくること。 正常より早い心拍数が持続する頻脈性の不整脈の原因となります。心室細動を起こす。1回あたりの心筋活動電位の持続時間(APD)が延長した場合に、途中で正常でない副回路に電気的な刺激が漏れて心室内を旋回しやすくなります。 A撃発活動triggered activity 異常な自動能。薬物の影響などで、活動電位持続時間が長くなると、再分極の途中から、膜電位が振動し(早期後脱分極)、triggered activityによる不整脈を誘発します。 B自動能亢進 被刺激性が亢進し、異所性自動能、異所性刺激伝導能を起こす。 |
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